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トンボ

トンボ取りのイラスト

 三島市では、昭和23〜26年(1948〜1951)に茅町(現、清住町)に住んでいた昆虫学者の朝比奈正二郎博士が、三島市や周辺の市や町のトンボを調査した記録があります。それによると70種近くのトンボが記録されています。

 その後、静岡昆虫同好会誌(加須屋真1996年)によると、58種が三島市内で確認されています。しかし、この中には、外国や南日本から台風や季節風で運ばれてきたと思われる種や、三島市には生息地がなく、どこか周辺の生息地から飛んできたと思われる種もあります。これらを除き、三島市内に今も確実に生息しているのは、44種と思われます。

 またサラサヤンマは、以前には日本でも1、2を争うほどの大生息地でした。三島は水質がよいので、条件が整えば、たくさんのトンボが棲(す)み着く可能性があります。トンボがたくさんいる環境は、人間にもとても快適な環境です。三島市が“トンボが飛び交うまち”になるといいですね。

源兵衛川(げんべえがわ)で見られるトンボ


 年間を通して水が確保できるようになり、流水性のトンボが戻ってきました。特にサナエトンボの仲間は、上流100mぐらいの間に5種類も記録されています。よく目にするのはダビドサナエとコオニヤンマで、ダビドサナエは、3月の終わりには羽化うか)が見られます。ほかに、オニヤンマ、ハグロトンボなども生息しています。

  町の真ん中の川で清流のトンボが見られる所は、全国でもあまり例がありません。


境川(さかいがわ)で見られるトンボ

 境川が国道1号をくぐった辺りは、5月になるとアオハダトンボが発生します。このトンボは静岡県内では狩野川水系だけで見つかっている大変珍しいトンボです。三島市では境川のごく一部に生息しているだけです。アオハダトンボは、ツルヨシやミクリなどの植物に産卵します。

 ほかにはハグロトンボ、コオニヤンマが生息しています。


オニヤンマ (オニヤンマ科)

 南西諸島の一部を除き、ほぼ日本全国に分布します。日本最大のトンボ。主に平地や山地の水のきれいな浅い流れに生息し、オスは水面上や道路上などを広範囲にわたって飛びながら縄張りを作ります。


コオニヤンマ (サナエトンボ科)

 南西諸島以外の日本全国に分布し、主に平地や山地の水のきれいな川に生息します。オニヤンマに似ているのでこの名がありますが、サナエトンボの仲間です。


ハグロトンボ (カワトンボ科)

ハグロトンボの写真  主に平地から低山地の抽水(ちゅうすい)植物(注)などが生えた河川に見られます。オス、メスとも翅(はね)は黒く、縁紋(えんもん)はありません。オスは腹部が金緑色ですがメスでは腹部も黒色です。未熟期には水辺を離れ、薄暗い樹木内や、神社、人家の裏庭などに移動します。

(注) 根は水底にあり、茎、葉を水上にのばす植物


アオハダトンボ (カワトンボ科)

 本州、九州に分布し、主に平地のヨシやミクリ類など沈水(注)・抽水植物が豊富で、水のきれいな川に生息します。ハグロトンボに似ていますが、オスでは翅(はね)が角度によって青緑色に見え、メスは翅の前縁に白い疑縁紋(ぎえんもん)があり、区別できます。

(注) 水中で生活する植物


中郷温水池(なかざとおんすいち)で見られるトンボ

 池や沼を好むトンボが生息しています。夏の温水池で1番目立つのが、トンボの王様ギンヤンマです。ギンヤンマは広い水面上をスイースイーと飛び回って縄張りを作り、メスが来ると連結し、多くはそのまま水草などにつかまって連結産卵します。


ギンヤンマ (ヤンマ科)

 日本全国に分布し主に平地や丘陵地の広々とした池や沼、溜池などに生息しています。また水田にも飛来します。オス、メスが連結したまま産卵する習性があります。

沢地川(さわじがわ)で見られるトンボ

 サナエトンボの仲間や流水性のヤンマの仲間が生息(せいそく)しています。春にはヤマサナエやダビドサナエ、夏にはミルンヤンマ、コシボソヤンマ、オニヤンマ、オジロサナエなどが見られます。また周辺の湿地や田んぼでは、カトリヤンマやクロスジギンヤンマも見られます。川沿いの開けた所では、夕方マルタンヤンマやギンヤンマが上空を飛んでいます。これらは主に砂防ダムや沢地工業団地の調整池で発生しています。


ミルンヤンマ (ヤンマ科)

ミルンヤンマの写真  やや小型で華奢(きゃしゃ)なヤンマの仲間です。黒地に黄色斑があり、色だけみるとオニヤンマに似ていますが、ずっと小型です。主に山地の渓流域に生息します。沢地川の上流ではオスの縄張(なわば)りが見られ、ほぼ確実に生息しているほか、山中城跡内では、夕暮れに芝生の上を摂食飛翔するものが確認されています。これはおそらく来光川で発生したものと思われます。


コシボソヤンマ (ヤンマ科)

  褐色地に黄色斑があるヤンマの仲間です。主に山地の渓流域に見られます。薄暗い環境を好み、夏期にはしばしば学校の校舎など建造物に侵入してきます。腹部の一部がくびれて細くなっていることから、腰細ヤンマの名で呼ばれています。


オナガサナエ (サナエトンボ科)

 

オナガサナエの写真  名前のとおり、オスの尾部付属器が長く、目立ちます。主に川の中流域で石がゴロゴロした開放的な河川に生息します。源兵衛川では毎年羽化殻は見つかっていますが、成虫は見られていません。沢地川や山田川などでは成虫も観察されています。


その他市内で見られるトンボ

ナツアカネ (トンボ科)

ナツアカネの写真  アカトンボの仲間で、オスは成熟するほど全身真っ赤になります。秋には水田などに飛来し、12月初めころまで見られます。三島では最も普通に見られるアカトンボです。オス・メス連結したまま空中から卵をばらまく打空(だくう)産卵をします。卵は乾燥に強く、冬を越して翌年孵化(ふか)します。


テンジクハネビロトンボ (トンボ科)


テンジクハネビロトンボの写真  ハネビロトンボの仲間は南方系で、すべて南西諸島やそれより南からの飛来と考えられます。本種は平成2年(1990)に静岡県三島市(沢地)で1匹、浜松市で1匹、千葉県で1匹の合計3匹が日本での記録のすべてです。本来の産地はベトナム、ミャンマー、スリランカ、インドなどで、おそらく台風で運ばれてきたと推察されます。大変貴重な記録です



キイトトンボ (イトトンボ科)

 本州、四国、九州に分布します。イトトンボの仲間としては太めで、オスは鮮やかなレモンイエローなので、他種とは簡単に区別がつきます。主に平地や山地の湿地に生息します。



シオカラトンボ (トンボ科)

シオカラトンボのイラスト 八重山諸島を除く日本全国に分布し、各地で最も普通に見られます。未熟成虫はオス、メスとも黄色っぽいのですが、オスは成熟するに従い白粉を生じ、青灰白色になります。これが塩を吹いたように見えます。写真のように自分とほとんどかわらない大きさのものを捕食(ほしょく)することも珍しくありません。主に池沼(ちしょう)や水田、プールや用水地、水たまりにも産卵します。

アジアイトトンボ (イトトンボ科)

アジアイトトンボの写真  主に湿地や水田などで見られる小さなイトトンボです。オスは腹部近くの第9節が水色で美しく、小さい体の割に移動性があるようです。特に秋口などには市街地の真ん中でも明らかに生息地を離れて移動中と思われるものを目にすることがあります。

朝比奈正二郎(あさひなしょうじろう)

朝比奈正二郎の写真三島ゆかりのトンボ博士
生物学者
大正2年(1913)生まれ

 トンボ博士として知られている朝比奈正二郎は、母の実家が三島市中央町にあった縁で、小学生のころは毎年夏休みに三島を訪れていました。昭和21年から25年(1946〜1950)ごろまでは、避暑及び疎開地(そかいち)であった茅町(現、加屋町)のクボッタ(俗称)に住んでいました。

 昭和13年(1938)東京帝国大学(現、東京大学)理学部動物学科を卒業し、満州(現、中国)で害虫研究に従事しました。昭和25年(1950)から国立予防衛生研究所で、主に伝染病を媒介(ばいかい)する衛生害虫の研究をする傍(かたわ)ら、昭和32年(1957)日本蜻蛉(とんぼ)学会を設立し、会長に就任しました。

 著書『ムカシトンボの形態学的研究』(英文)で学位を得るとともに、日本動物学会賞を受け、また多くの著作があります。



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