(第117号) ~防火のお守り~ 荒神さんのスミンチョとお札  (平成10年2月1日号)

荒神さんのスミンチョとお札
 冬の火災の多い時期には各地の消防団が「火の用心」を呼びかけて地域を巡回します。

 昔は子供会も結束して、村の夜回りを行ったこともありました。幾人かの子供が組を作って、先輩の後に付き、拍子木【ひょうしぎ】を「カチカチ」とならしながら「ひのよーじん」と叫んで回った思い出があります。火災予防は各村々の自警組織の仕事でした。

 家庭では、もっとも火をよく使う勝手場のカマドの上や、台所のイロリの上などに「防火の神様」を祀【まつ】って、恐ろしい火災の発生が無いように祈りました。

 防火神、すなわち火を司【つかさど】る神を祀る習慣は、各地にさまざまな形があり、また神にも種類が見られます。全国的に広く分布している火の神には京都の愛宕【あたご】神社を本社とする「愛宕神」があります。各地の愛宕神社はたいていここから分霊され祀られた神社でしょう。静岡県では周智郡の秋葉神社が知られています。「アキハサン」と呼ばれ、各村では講組織を作って代参【だいさん】を送り、いただいたお札を張って火の神を祀ります。三島などでは、周智郡まで行くのは遠過ぎるため、清水市にある秋葉神社に参拝することが多いようです。

 現在も「秋葉講」を続けている新谷では、毎年12月15日前後になると講を開き、代参がもらってきたお札を各戸に分ける行事を行っています。

 また、通称「韮山の荒神【こうじん】さん」で知られる竈【かまど】神社は、三島、田方、中伊豆方面までの信仰圏をもち、正月28日の祭礼日には多くの参拝者を集めています。竈神社で頒布されているのがスミンチョとお札です。スミンチョは一辺が1センチメートルくらいのサイコロ型の木で出来ており、これを包み込んでいるこよりをイロリの自在鈎【じざいかぎ】に結びつけました。お札は竈の上に設けられた「荒神様」の祠【ほこら】に納めました。お祭には名物の「トダンゴ」(十団子)を売る店など、参道に何軒もの露天商が並びます。
(広報みしま 平成10年2月1日号掲載記事)