(第197号) 昆虫の起源 (平成16年10月1日号)

トンボの化石
 10年程前に『ジュラシック・パーク』という恐竜の映画が上映されたのを覚えていらっしゃるでしょうか。琥珀に閉じ込められた、6500万年前の恐竜の血を吸った蚊の化石から恐竜のDNAを取りだし、遺伝子工学を駆使してクローン恐竜を作るというところから物語が始まっています。これは単なる映画の中のお話というだけではなく、実際にも琥珀の中の昆虫化石からDNAが検出された例もあるそうです(ただし、クローン恐竜はできていません)。琥珀とは松脂などの植物性樹脂が地中深くに何千万年もの長い年月をかけて固まってできたものです。琥珀に閉じ込められた昆虫化石は、立体的で、かつ完全な状態で保存されている場合も多いため、DNAも保存されやすいのです。
 さて恐竜と琥珀の話はこの辺にして、昆虫の起源についてお話ししてみたいと思います。昆虫はクモ類とともに、最も早く陸上生活をするようになった動物だといわれています。昆虫の起源は古く、約4億年前の古生代デボン紀の地層から発見されたトビムシに似た化石が、翅の無い原始昆虫の始まりだと考えられています。そして古生代後期の石炭紀には、より多くの種類の昆虫が出現しました。翅を広げると約70cmもある巨大トンボのメガニウラや、翅の長さが15cmもあるコオロギなど、翅のある有翅昆虫もこの頃現れたとされています。これらの昆虫は次第に繁栄を続け、約6000万年前の新生代初めにはほとんど現在の昆虫と変わらない程に分化しておりました。
 こうして分化した昆虫の種類は非常に多く、現在では全世界の動物の約8割(100万種類)を占めるともいわれ、様々な環境に適応した形態に変化し、地球上のあらゆる場所で生活しています。
 人類の誕生は約400万年前と言われていますが、昆虫はそれよりもずっと前に誕生した、私たち動物の大先輩なのです。そう考えると、身近にいる昆虫もまた違った角度で私たちの眼に映るのではないでしょうか。
(広報みしま 平成16年10月1日号掲載記事)