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楽寿園の自然 | 楽寿園内の溶岩の固結のようす

(1)溶岩層と溶岩崖

 園内の地形は、全体として概ね北側が高く南や東南、東側が低くなっており、溶岩の流下してきた方向は、主に北北西からということが分かります。
 園内には、いたるところで三島溶岩の露頭が見られますが、標高の最低は、三つの瀬の一つである「はやの瀬」から源兵衛川に合流するところで約26m、最高は北門付近の約40mで、高低差は約14mあります。この高低差は、北側から南側への一様な傾斜面ではなく、3つの段差があって溶岩崖をつくり、4つの溶岩層の重なりから出来ています。
 最低位の溶岩層をGL1とし、その上の溶岩層を順にGL2・GL3・GL4として北門と「はやの瀬」の断面を模式的に示すと図のようになります。
はやの瀬_断面模式図_楽寿園の自然
 最低位の溶岩層GL1の表面は、小浜池・三つの瀬でその末端部は表土や砂礫に埋没して見る事はできませんが、三島市街の中央台地を形成している基盤となっていると考えられます。
 溶岩層GL2の標高は、約28〜30mで楽寿館を乗せています。西側には「常盤の森」、東側には「さぎの森」があり正門へと続いています。
 溶岩層GL3の標高は、約31〜33mでのりもの広場や梅御殿を乗せています。
 溶岩層GL4の標高は、約38〜40mで北門や楽寿園管理事務所を乗せています。
 各溶岩層が固結して出来た溶岩崖は、ほぼ垂直で高さ3m前後、その表面は、同一な平面ではなく各所に起伏をつくり、所によっては丘状になったり、小高い山状、小さな塚になっているところもあります。
 また、園内各溶岩層の間には、砂礫層を狭在していることが確認できないので、各溶岩流下の固結時期はほぼ同じといえます。

(2)園内で見られる溶岩のいろいろ

ア 色

 園内の溶岩は、珪酸分(SiO2)が少なく(50%位)、有色鉱物の多い玄武岩で黒っぽい色をしています。造岩鉱物の斑晶は小さく、肉眼ではよく分かりません。岩質は緻密です。

イ 空胞

 溶岩には、小さい空胞が多数あるものが見られます。園内には大空胞のあるものは確認できません。空胞は高温度の溶岩から火山性ガスや噴出時にとりこんだ水が、高圧のガス状になり、放出されたために出来たものです。
 急激な固結を意味しており、溶岩層の表面及び下底に集中する事が多いです。
 空胞の形は不規則ですが、肉眼で見られるものは直径が、10mm以下のものが多いです。空胞は、溶岩の流動方向に平行に配列する事が多く、空胞の形は、流動方向に長軸に伸びた楕円形を示す事が多いです。

ウ 裂溝岩塊

 溶岩には裂け目がありますが、裂け目は冷却方向に対して垂直方向に生じます。
 それは体積が、その方向に収縮するからです。冷却方向が不規則・多方向にほぼ同時に生ずると、大小の角ばった岩塊になります。これを裂溝岩塊といいます。
 園内には、「小浜の森」「天神の森」、「深池」付近等に見られます。

写真 裂溝岩塊 (小浜の森)
裂溝岩塊(小浜の森)_楽寿園の自然

エ 縄状溶岩

 溶岩流の表面は大気に触れて冷却し、ガスの放出もあって温度が下がり、粘性が高くなるのに対し、その内部は温度が高くガスも多量に含んでいるので、流動性が高くなっています。
 傾斜面で冷却しなかった溶岩の一部に割れ目ができると、そこから内部温度の高い溶岩が、飛び出し流下します。 冷却しはじめの溶岩は、この流動を引張るように働くのでシワが生じます。
 このシワが縄状に見えるので、縄状溶岩といいます。園内には、「小浜の森」と「さぎの森」で見ることができます。

写真  縄状溶岩 (さぎの森)
縄状溶岩(さぎの森)_楽寿園の自然

オ 平滑溶岩

 溶岩の固結した表面が、比較的滑らかで凸凹の少ない状態のものをいいます。同温でガス成分が少ない溶岩が、同一条件(傾斜面、流速等)で流下すれば、表面が平滑な固結溶岩ができます。
 溶岩の流下の先端が止められても、高温の溶岩の供給が一様に続くと押し上げられて盛り上がり、丘状や山状の固結溶岩になります。

写真  平滑溶岩 (小浜の森)
平滑溶岩(小浜の森)_丘状_楽寿園の自然 平滑溶岩(小浜の森)_山状_楽寿園の自然
丘状 山状

カ 流出突起(線状突起、球状突起)

 固結した溶岩の内部ガス圧または上部の荷重等によって表面に割れ目ができ、そこから内部の溶岩が押し出されて固結した溶岩です。割れ目が長くなれば固結する溶岩も長くなり、線状溶岩突起となります。押し出されて固結した溶岩の形に丸みがあれば、球状溶岩突起ができます。

写真 流出突起 (小浜の森)
流出突起 (小浜の森)_楽寿園の自然

キ ブリスター(Lava Bluster)

「火ぶくれ」と訳されるように、溶岩流の末端で薄くなった部分に「火ぶくれ」のような膨らみを作り、それが爆発して出来たものです。これは溶岩流が固結する近くで水を取り込みます。この水が水蒸気のポケットに なって、熱のため膨張して膨らみを作るか、または爆発口を作るものです。
 園内の小浜の森にあるものは、爆発口が西北方向を向いている部分と南東方向に向いている部分があります。その途中に線状突起状のものもあるので、これらのものは、大小で別のブリスターであるかも知れません。
「さぎの森」の北側のGL2の溶岩崖にあるものは、爆発口が西方向を向いており、ブリスターの特徴をよく表している貴重なものです。

ブリスター(小浜の森)_楽寿園の自然 ブリスター(さぎの森)_楽寿園の自然
写真1  (小浜の森) 写真2  (さぎの森)

ク 溶岩囲壁

 流下してきた溶岩流が、ある箇所でその時の冷却条件変化や何かの妨げ等により溶岩が流れ込まないで、溶岩の囲壁ができることがあります。
 その一部に円形状や楕円状で、池や井戸のようなものができることがあります。このようなものを、溶岩池と言います。
 固結時の溶岩が多量であれば、囲壁の高さは高くなります。少量であれば低くなります。園内では楽寿館の東側にある深池と呼ばれている所が、この溶岩池で大変珍しいものです。
 GL1固結溶岩層の上にGL2の溶岩流がきて、囲壁をつくったもので、この深池の北側の部分には、GL3の溶岩が重なり深さを際だたせています。
 豊水期には、これら溶岩の亀裂からの湧水で池が満たされます。

写真 深池 (楽寿館東側)
深池(楽寿館東側)_楽寿園の自然

註 楽寿園外では、楽寿園南側の個人宅の裏庭に、直径約50p、深さ約70pの溶岩池があります。
    また、楽寿園東側の個人宅の庭にも長径約10m、短径約5m、深さ約1mの溶岩池があります。
    この場所より少し離れた南側の個人宅には、溶岩崖の渕に直径約3m、深さ約1m弱の溶岩池があります。
    いずれも往時の豊水期には、亀裂からの清冽な流れで満々と水が湛えられていました。

ケ 酸化第二鉄のついている溶岩

 園内の溶岩の色は、玄武岩なので黒っぽい色をしているものが普通ですが、中にはよく見ると表面が黄褐色又は赤褐色になった溶岩があります。
 この色は、酸化第二鉄(Fe23)の色ですが、ブラシ等をつかって水洗いしても採れません。
 固結している溶岩の中には、色々な鉱物が含まれています。
 酸化第二鉄の含有量は数%であり、この酸化第二鉄の融点は1,565℃、比重は5.1〜5.2です。  固結している溶岩の表面にある酸化第二鉄の層は、極めて薄くほぼ一様で、まるで焼物(陶磁器)を仕上げる時に使う、釉薬の焼成結果に似ています。
 高温の溶岩は、固溶体なので色々な鉱物を溶かしていますが、流下中に酸化第二鉄だけがある部分の溶岩の表面に、析出してくるとは考えにくいです。
 溶岩が固結する際、含有している酸化第一鉄(FeO、融点1,377℃比重5.7)等が高温度の状態で空気に触れて酸化して、できたものであろうと考えられます。

註・玄武岩質溶岩噴出時の最高温度測定値は、約1,200℃です。
    ・酸化第二鉄(Fe23) が、酸化すると磁鉄鉱(Fe24) になります。

写真  酸化第二鉄のついている溶岩(小浜の森)
酸化第二鉄のついている溶岩(小浜の森)_楽寿園の自然

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電話番号 055-975-2570