ホーム > トピックス > (2)楽寿園の樹林(森)後編

(2)楽寿園の樹林(森)後編

6.あやめヶ池・みどりヶ池・すずめヶ池周辺(表6参照)<id="6">

 慶応年間、千貫樋へ流下させる「宮さんの川」(蓮沼川)の出水口に架けられた、三景橋付近から楽寿園の西側にある郷土資料館地先までの区域です。
 森の中には、郷土資料館の西側にある「万葉の森」からの湧水を利用してつくられた三つの池があり、西からすずめヶ池、みどりヶ池、あやめヶ池の順に小さなせせらぎで繋がっており、小浜池に注がれています。これらの池は水がいつもあるので、渡り鳥の休憩地になっています。
 三景橋を渡ると、園路の両側にクスノキの大木が数多く見られ、樟脳の微香がすがすがしく私たちを健康にしてくれると思います。
 あやめヶ池近辺の樹下には、中低木としてヒサカキ、サンゴジュ、ヤブツバキ等の常緑樹が生育していますが、林床にはほとんど下草はありません。クスノキは、広葉常緑樹で暖帯によく生育します。この域にある大木30本は、いずれも樹勢が良好です。樹高は約25mで空間が高いので、各池は、これ等クスノキの樹下にあることになります。
 クスノキの一枚一枚の葉の色が、明るい黄緑色で艶があるため、日射をよく反射して、樹下は比較的明るいです。
 あやめヶ池の南側の園路脇には、ヤマザクラの園内随一の大木があります。幹は、根元から北方向に傾いていますが樹勢はよいです。開花期には、多数の花がやさしさを与えてくれます。
 みどりヶ池の北側には、楽寿燈籠があります。この近くにケヤキの大木1本とイヌマキの大木1本があります。この付近からは「常盤の森」の南西部を見ることができます。近くにマテバシイやアラカシの岩上座相樹を見ることができます。各池の岸に植栽されたイロハモミジがあります。紅葉は常緑樹の大木の樹下で あるため、やさしさを感じさせてくれます。
 マテバシイ種子は、コナラの種子に似て細長いですが、大きいので落下の時期には、楽しい拾い物となり食用にもなります。


表6 あやめヶ池、みどりヶ池、すずめヶ池周辺


No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数
1 クスノキ 30 9 サザンカ 3 18 ムクノキ 1      
2 イロハモミジ 14 9 サンゴジュ 3 18 イタジイ 1
3 アラカシ 13 9 ヤマザクラ 3 18 マテバシイ 1      
4 ヒノキ 10 9 ヤブツバキ 3 18 ヤブニッケイ 1      
5 ケヤキ 8 14 ヤマモモ 2 18 ソメイヨシノ 1      
5 ヒサカキ 8 14 モチノキ 2 18 クヌギ 1      
7 エノキ 5 14 トベラ 2 18 シラカシ 1      
8 イヌマキ 4 18 スギ 2 18 マユミ 1      
9 ハゼノキ 3 18 シュロ 1 18 センダン 1 27種 125

楽寿園の自然_あやめヶ池
あやめヶ池
楽寿園の自然_すずめヶ池
すずめヶ池

7.のりもの広場・どうぶつ広場周辺(表7参照)<id="7">

 溶岩層GL2とGL3に生育している樹木です。諸施設をつくるために、盛土をしたり、削りとったところも多くあり、自然の地形が変っているところが多いです。
 樹木は、施設に合わせて植裁したものが数多くあります。往時からの実生樹の多くは、大木になって残っているので、観察には好資料となります。
 植栽樹としては、主に遊園地付近のソメイヨシノ20本余と、食堂の南から「鯉の池」地先に見られるイロハモミジです。春のソメイヨシノの花、秋のイロハモミジの紅葉は、愛でるのに十分な価値があります。
 自然の生育樹としては、動物園舎近くのクロマツ、ハリギリ、モチノキ、エノキ、「のりもの広場」の線路脇のクヌギ等と、「鏡の家」近くのケヤキがあります。
 これ等は、何れも老壮相を示していますが樹勢は良好です。


表7 のりもの広場、どうぶつ広場周辺


No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数
1 ソメイヨシノ 21 15 シラカシ 3 22 センダン 2 33 ハゼノキ 1
2 イロハモミジ 19 15 シュロ 3 22 アオキ 2      
3 ケヤキ 18 15 クスノキ 3 33 セイヨウナシ 1      
4 ヒサカキ 11 15 ヒノキ 3 33 アセビ(植え込み) 1      
5 カイヅカイブキ 11 15 ハリギリ 3 33 サツキ(植え込み) 1      
6 エノキ 10 15 ウメ 3 33 イボタノキ 1      
7 クヌギ 7 22 アカマツ 2 33 ヤマブキ 1      
8 ヤブツバキ 6 22 ヤマモモ 2 33 メダケ 1      
9 エンジュ 5 22 イチョウ 2 33 マサキ(植え込み) 1      
9 アラカシ 5 22 カキ 2 33 オオシマザクラ 1      
9 ムクゲ 5 22 ミズキ 2 33 アカシデ 1      
12 ツツジ(植え込み) 4 22 クリ 2 33 ムラサキシキブ 1      
12 ヒマラヤスギ 4 22 ネムノキ 2 33 ヒイラギ 1      
12 クロマツ 4 22 アカメガシワ 2 33 ムクノキ 1      
15 モチノキ 3 22 ヤマザクラ 2 33 サザンカ 1 (46種) 187

8.天神の森(表8参照)<id="8">

 園の最も西側に位置しています。溶岩層GL3の小高い尾根の域で、溶岩の露頭が多数見られます。森の北側に天神社の祠があります。園路は尾根上を南北に通じていますが、東側の斜面はやや急で「万葉の森」の低地に接しています。
 樹木は30種余ありますが、高木層を作っているのは、ムクノキ(13本)、クスノキ (13本)、クヌギ(7本)、エノキ(5本)、シイ(5本)等で、樹高は、約20~25mで樹勢がよいです。
 ヤブツバキが最多数木(25本)です。大部分が中低木ですが、この他イヌビワ、ヒサカキ等があります。森全体として広葉樹林ですが、常緑樹と落葉樹の混成森です。しかし、クスノキ、シイ、タブノキ等の大木の占有率が大きいので年間を通して、林床への日射量は少なく、下草の生育も少ないです。
 また、林中には岩上座相樹が数多くあります。
楽寿園の自然_天神の森1
楽寿園の自然_天神の森2


表8 天神の森


No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数 No. 樹種 本数
1 ヤブツバキ 25 11 ケヤキ 3 20 カマツカ 1 20 コナラ 1
2 ムクノキ 13 11 イヌビワ 3 20 ムラサキシキブ 1 20 ネムノキ 1
2 クスノキ 13 11 カゴノキ 3 20 ミズキ 1 20 カツラ 1
4 クヌギ 7 11 サンゴジュ 3 20 クロガネモチ 1 20 ソメイヨシノ 1
5 エノキ 5 11 サカキ 3 20 アオキ 1 20 イヌガシ 1
5 アラカシ 5 16 モチノキ 2 20 アカガシ 1      
5 ヒサカキ 5 16 ムクゲ 2 20 ウメ 1      
5 シイ 5 16 トベラ 2 20 マユミ 1      
5 イロハモミジ 5 16 ハゼノキ 2 20 ハリギリ 1      
10 サザンカ 4 20 シラカシ 1 20 キリ 1 (35種) 126

9.万葉の森 (表9参照)<id="9">

 どうぶつ広場南側平地の溶岩層GL2を利用して昭和49年(1974年)に造成されました。
 広さは約4,000平方メートル(約1,212坪)で、万葉集に歌われている植物約180種のうち、この地で植栽可能な草本類52種、木本類72種(計124種)を集めてあります。
 各々の植物の傍に例歌を墨書した木の立札を添えてあります。万葉歌人の意に思いを巡らしながら観察すると、新しい知見を得る事が多く楽しい限りです。
 ただし、万葉の植物名と現代植物名と同一のものは少なく、異説が数多くあるものは有力種を充ててあります。
 また、植物は毎年成長し、生存競争も絶えず行なわれています。病虫害もあるので、観察が不適切にならないように意を尽くしています。
※植栽植物は、枯れるなど減少することがあります。

※万葉植物の研究が盛んになり、数多くの著書とともに万葉植物園も各地につくられています。

※三島市でも、万葉の森完成記念に、冊子「楽寿園万葉の森 万葉植物歌・略解」を発行しています。
・昭和50年4年1日 三島市公園課発行
・万葉の森採集植物関係165首
・植物の万葉呼名、例歌、作者名(作者不詳を除く)、解釈、和名、産地、用途(一部の植物)を記載

「楽寿園万葉の森 万葉植物歌・略解」はこちら

楽寿園の自然_万葉の森1
楽寿園の自然_万葉の森2


表9-1 万葉の森(草本類)


No. 万葉名 現代名 No. 万葉名 現代名
1 あかね アカネ 53 ぬばたま ヒオウギ
4 あさがほ キキョウ 54 ねつこぐさ オキナグサ
5 あし アシ 55 はちす ハス
9 あやめ ショウブ 57 はまゆふ ハマオモト
10 あをな カブ 58 ひえ ノビエ
13 いはゐづら スベリヒユ 60 ひし ヒシ
15 うけら オケラ 62 ひる ノビル
16 うはぎ ヨメナ 63 ふぢばかま フジバカマ
17 うも サトイモ 64 まめ ツルマメ
19 おほゐぐさ フトイ 66 むぐら カナムグラ
21 かきつばた カキツバタ 68 ももよぐさ ツユクサ
23 かほばな ヒルガオ 69 やまあゐ ヤマアイ
26 くくみら ニラ 70 やますげ ジャノヒゲ
28 くそかづら ヘクソカヅラ 71 ゆり ヤマユリ
29 くれなゐ ベニバナ 72 よもぎ ヨモギ
30 こけ コケ類の総称 74 わすれぐさ ヤブカンゾウ
31 こなぎ コナギ 75 わらび ワラビ
33 しだくさ ノキシノブ 78 をみなへし オミナヘシ
34 しば チカラシバ      
35 しりくさ サンカクイ      
36 すげ カサスゲ      
37 すすき ススキ      
38 すみれ スミレ      
39 せり セリ      
40 たで ヤナギタデ      
41 たまばはき コウヤボウキ      
42 つきくさ ツユクサ      
43 つぎね ヒトリシズカ      
44 つちはり メハジキ      
45 つばな チガヤ      
46 ところづら トコロ      
47 なぎ ミズアオイ      
48 なでしこ カワラナデシコ      
51 にこぐさ ハコネシダ   52種


表9-2 万葉の森(木本類)


No. 万葉名 現代名 No. 万葉名 現代名
100 あしび アセビ 151 つげ ツゲ
101 あぢさゐ アジサイ 152 つた テイカカズラ
103 あふち センダン 153 つつじ ヤマツツジ
104 あべたちばな クネンボウ 155 つばき ツバキ
105 いちし エゴノキ 156 つまま タブノキ
107 うのはな ウツギ 158 つるばみ クヌギ
108 うまら ノイバラ 159 つるばみ トチノキ
109 うめ ウメ 160 とが ツガ
110 エノキ 161 なし ナシ
111 おみのき モミ 162 なつめ ナツメ
112 かし アラカシ 163 なら ミズナラ
113 かしは カシワ 164 ねぶ ネムノキ
114 かぶのき ヌルデ 165 はじ ヤマハセ
115 かつら カツラ 166 はねず ニワウメ
117 かはやなぎ カワヤナギ 168 はり ハンノキ
121 かへるで カエデ類 169 ヒノキ
124 くり クリ 170 ひさぎ アカメガシワ
125 ごとう アオギリ 171 ふぢ フジ
126 こなら コナラ 172 ほほがしは ホウノキ
127 このてがしは コノテガシワ 174 まき スギ
128 さいかち サイカチ 175 まつ マツ
129 さかき サカキ 176 まゆみ マユミ
130 さきくさ ミツマタ 177 みつながしは カクレミノ
131 さくら ヤマザクラ 178 むろのき ネズ
132 ささ ササ類 179 もむにれ ハル(アキ)ニレ
133 さなかずら サネカズラ 180 もも モモ
134 しきみ シキミ 181 やなぎ シダレヤナギ
135 しひ シイ 182 やまたちばな ヤブコウジ
136 しらかし シラカシ 183 やまたず ニワトコ
137 すぎ スギ 184 やまぶき ヤマブキ
138 すず スズタケ類 185 ゆづるは ユズリハ
139 すもも スモモ 200 いはづな テイカカヅラ
141 たけ タケ類 212 はぎ ヤマハギ
142 たちばな タチバナ      
145 ちさ エゴノキ      
146 ちち イヌビワ      
147 ちち イチョウ      
148 つがのき ツガ   72種
149 つき ケヤキ   合計(草本類・木本類) 124種

  • 楽寿園の自然_万葉の森3
  • 楽寿園の自然_万葉の森4
  • 楽寿園の自然_万葉の森5

10.楽寿の森管理計画<id="10">

前述調査報告の後、平成28~29年度にかけて、園内の現在植生を調べ、植物の種類や状況を把握し、 将来にわたり適正に楽寿園の森を適正に維持管理していくため、 「楽寿の森管理計画」(クリックして閲覧)を策定しました。