事業所 平常時の防災活動

事業所が果たすべき役割

 防災基本計画では「国民の防災活動の環境整備」における項目の一つとして「企業防災の促進」を掲げ、災害時に企業の果たすべき役割として、以下の3点が記載されています。
 ・従業員、顧客の安全
 ・経済活動の維持
 ・地域住民への貢献
 企業については、まず第一に、企業自身の災害対策を推進し、従業員及び顧客の安全確保、災害が発生しても業務継続できるようにすることが必要であり、そのうえで、地域への支援、さらには経済復興への貢献等、地域への貢献を果たしていくことが求められます。
 また、地域への貢献に関しては、災害対策基本法第7条の趣旨からも重要であると考えられ、今後、貢献活動を促進するための環境整備を行うことが必要であると考えられます。

社会的責任としての防災対策

 東海地震に係る地震防災対策強化地域では、各企業の自立した防災対応が求められることになります。また、地域住民、自主防災組織、行政機関等との連携も、より一層重要なものとなり、「自らの命は自ら守る」「自らの地域は皆で守る」という意識において、各企業も地震防災対策に取り組む必要があります。
 企業(事業所)は、地域住民の生活に深く関わる社会の構成員です。多様な業種や業態があり、規模も千差万別ですが、企業によっては、多くの社員・従業員や顧客、設備、資機材等を有しており、防災対策において社会的責任があると思われます。
 企業(事業所)の社会的責任としては、従来から「従業員や顧客の安全確保」「財産保全」などに重点が置かれてきましたが、このほか今日では、「本来業務・サービスの安全稼働や早期復旧」、「地域貢献」が求められます。

(1) 本来業務・サービスの安定稼働や早期復旧
 災害、特に東海地震、東南海・南海地震のような大規模地震が発生した場合、通常営まれている企業の本来業務は中断する可能性があり、企業活動に影響が生じます。
 さらに、他に代替的製品がない部品等を製造・生産する企業が被災し、業務が中断した場合、全国的な経済活動全体に大きな影響を与える可能性も考えられます。
 災害による個々の企業の業務継続を行うための事前対策としては、
 ・業務情報バックアップシステムの整備
 ・バックアップオフィスの確保
 ・施設、設備の耐震化
 等が必要であるとともに、事業減益等を最小化し、目標とした時間内に基幹業務を再開できるように、あらかじめ、どれくらいの規模の被災となるかのシナリオを想定し、これに基づき災害等に対する基本方針、緊急時の対応組織を整備し、業務運営のための実施すべき事柄の優先順位や代替業務手段を定めておくことが必要です。
 また、訓練等でその実効性を検証し、必要に応じて改善していくことが望まれます。

(2) 地域貢献
 災害時の企業の地域貢献活動は、平素から取り組んでいる企業活動の延長上、事業特性(企業の強み)を活かしたものが、結果的に地域おニーズへのタイムリーな支援となると考えられます。
 地域貢献を実現するための企業における環境整備方策としては以下のようなものがあげられます。
 ・自主防災組織と事業所の協働体制の構築
 ・地域での防災情報共有化のための仕組みの構築
 ・防災に係るリーダー的人材の育成 など

自主防災組織等との協働(コラボレーション)

 東海地震をはじめとする大規模な災害が発生した場合や、災害時の備えを図るための防災訓練などを行う場合は、地域の人々や防災関係機関・団体の参加や協力、連携によって、地域防災力を高める効果が期待できます。
 企業(事業所)も地域コミュニティの構成員であり、工業団地やオフィス街のように近隣企業相互で形成されるコミュニティ・ネットワークはもちろんのこと、既成市街地における住工・住商混在地域など、企業や事業所が、平常時から住民や行政等と連携してまちづくり等に参画し、地域防災力を高めることが重要です。また、コミュニティ・ネットワーク形成の際に、災害対策上の必要な事項に関して、行政機関と事前に協定を締結することも必要であると考えられます。
 企業(事業所)と自主防災組織との関わりについては、災害時には、企業(事業所)の多くが操業・営業を止め、一時的に社員・従業員を帰宅させる方針をとっており、社員・従業員は自宅に帰れば自主防災組織に一員であることから、間接的に自主防災組織との連携につながることになります。
しかし、周辺地域で緊急を要する事態が発生した場合は、社員・従業員を社外(周辺地域)に派遣し、消火や救出・救護などの応援を行うことが求められます。このため、周辺の自主防災組織と合同で訓練を行うなど、日ごろから十分にコミュニケーションをとっておく必要があります。
 資機材の供与・貸与や敷地解放についても同様で、例えば、自主防災組織からの要請に対応する窓口はどこか、何が供与・貸与の対象となるのか、などの基本的事項は事前の取り決めが必要です。また、自動車や重機車両については、現物があっても運転できる人がいなければ使用できません。誰がどう運転手を手配するかは事前に決めておかなければなりません。
 なお、企業(事業所)が社員・従業員を地域に応援派遣する場合には、労務災害の問題を考慮する必要があります。業務との関連性を明確にするために、計画としてあらかじめ定めておくことが望まれます。