(第107号) ~ハイカラの走り~ 自転車用ガス灯  (平成8年5月1日号)

自転車用ガス灯
 夜道を走る自転車に点灯が義務付けられたのは、昭和35年の道路交通法施行からでしょうか。今では当然のこととして、どんな自転車にも備え付けられている自転車用ライトですが、さて、それがいつからかというと案外分からないものです。

 写真の自転車用のガス灯は、市内のある方から郷土館に寄贈されたものです。銀メッキの光沢といい、そのハイカラな形といい、おそらく初期の自転車用ライトではないでしょうか。

 自転車は1818年、ドイツのカール・ドライスの考案によるものが最初だとされ、日本への移入は慶応年間か、明治初年頃だといわれます。明治4年の東京府の諸車税の対象車に「自転車」とでているので、この年には確実に日本に入っていたようです。明治30年代には富裕階層のステータスシンボルとして愛用され、40年代には会社や商店の業務用として普及しました。

 三島での最初の自転車所有者は津田守三だといわれます。守三は、酪農家であり、コンデンスミルクを最初に作って知られた花島兵右衛門の長男ですから、当時の花島家の経済事情からも実際のことであったであろうことが頷けます。おそらく明治40年代頃と思われます。

 さて、冒頭の自転車用ガス灯ですが、記されている商標文字(DETECTIV HERMRIEMANN’S CHEMNITZGABLENZ)からドイツ製であることが分かりました。精巧に、工夫されて製造されていました。自転車のハンドル軸のライト装着部に蝶ナットで固定、あるいは取り外しが出来るようになっていて、取り外した場合は伸縮自在の取っ手を持って、普通のライトとして使用できます。明かりの燃料はカーバイト。カーバイトは水と混合させることでガスを発生させ、これに点火して明かりとします。水はコックに付けられた目盛りで調節が出来、明かりの明暗を変えることが出来るようになっています。
   このガス灯は戦前の頃の物と思われますが、ハイカラなライトを得意げに点けて走った姿が想像できます。
(広報みしま 平成8年5月1日号掲載記事)