(第116号) ~田起こしの改良農具~ スキドウグ (平成9年2月1日号)

スキドウグ
 秋、稲刈りが済むと水田にはトラクターが入れられ、干上がって固くなった土が耕作されます。翌年の田植えを待つばかりです。二毛作が行われていた時代には、冬の今ごろ、田には麦が青々としていたものでしたが、現在では耕作された土がボコボコと盛り上がっているだけで、昔に比べてずいぶん殺風景な田圃【たんぼ】になったものだと思います。昭和30年代から40年代にかけて農村の景観が変わり始めたと言われます。二毛作としても麦が栽培されなくなったのも、この時代のことでしたし、農村が急速に機械化されて農作業の方法が大きく変わったのも同時代のことでした。

 さて、写真の郷土館の資料の一つである農具、スキドウグを見ながら、耕作農具の歴史を眺めてみましょう。

 田や畑を掘り起こして作物を作ることを耕作すると言いますが、耕作の歴史は今から数千年前までさかのぼります。古代の耕作道具は言うまでもなく人力に頼るもので、それは一本棒のようなものであったに違いありません。棒を地面に突き立て、てこの応用で一穴一穴の土を「掘り起こす」という耕作の原始の方法でした。やがて、鉄器の発明もあり、棒の先端に刃を付けた鍬【鍬】が一本棒にとって代わります。最初のスキドウグは刃先と柄が直線上にある突き差し型であったものが、改良が進んで現在でも見られるような刃と柄の部分が種々の角度を持っている振り下ろし型の鍬になったと言われます。耕作の意味の「鋤【す】く」や「うなう」という言葉がありますが、このような古い道具から出た言葉だと思います。

 江戸時代になって水田や畑が増えてくると、耕作は人力だけでは間に合わず牛馬の力が農具の導入されました。スキドウグはカラスキとも呼ばれますが、牛馬に引かせて飛躍的に効率よく土を起こす農具として華々しく農村に登場しました。戦後、スイドウグは耕運機に代わり、今はさらに便利なトラクターとなりました。
(広報みしま 平成9年2月1日号掲載記事)