(第250号)屏風に描かれたふるさと三島 (平成21年3月1日号)

 郷土資料館では、企画展「屏風に描かれたふるさと三島」(平成二十一年三月十五日から五月二十四日)を開催します。三島宿風俗絵屏風は、三島市有形指定文化財で江戸時代の三島宿の様子を語る貴重な資料です。横六メートルにおよぶ大画面には川原ケ谷を中心とした箱根街道、宿内の三嶋大社、本陣、旅籠や人々など、往時の三島のさまざまな生活の様子が描かれています。企画展では、屏風に描かれた景物について絵図や文書などの資料を通して、江戸時代の三島宿の様子を紹介します。

□三島宿風俗絵屏風

三島宿風俗絵屏風 六曲一双 紙本著色 (左隻)
250三島宿風俗絵屏風 六曲一双 紙本著色 (左隻)  

(右隻)
250(右隻)

 通常の屏風よりひとまわり小さい中型で六曲一双からなる屏風です。画面全体に江戸時代の三島宿を中心とした風景が描かれています。今から約一七〇年前の天保年間(一八三〇〜四三)に三島宿の旧家山口家(本町)で、半年滞在した絵師小沼満英が、宿代としてこの屏風を描き残したと伝えられています。残念ながら満英については、屏風に記された落款・印章がわかるのみで絵師としての画歴や人物については不明です。  

 画面は当時の描写手法で、宿場とその周辺の景観を高所から見下ろすように捉えられています。省略と強調の手法を取り入れ東西の距離を大幅に縮小し、建築物も主な建物に限定した構成がとられています。樹木や人物の表現描写は簡略ですが、四季の景観を盛り込み、全体的な宿場のにぎわいや湧水に恵まれた三島の生き生きとし た風景を描き出すことに作者の主眼が置かれているようです。  

 右隻(向かって右側の屏風)は積雪の富士と箱根西ろくを遠望として、川原ヶ谷、新町橋にかけての東海道筋や農村風景。左隻(向かって左側の屏風)は三嶋大社から千貫樋の境川までにぎやかな宿内の様子を、春と夏の季節感を漂わせながら描かれています。

【平成21年 広報みしま 3月1日号 掲載記事】