(第428号)木町の観音堂(令和6年2月1日号)

 「講(こう)」とは、信仰のために結成された集団で、伊勢神宮を参詣する伊勢講(いせこう)、富士山へ参詣する富士講(ふじこう)、観音様を信仰する観音講(かんのんこう)などさまざまな講があります。

 「講」は信仰のためだけではなく、近所の人が寄合い、時には食事を共にしながら日々のあれこれをおしゃべりする、楽しみの場でもありました。ライフスタイルの変化で各地の講はどんどん減少していますが、今も地域の人たちによって大切に歴史を重ねている講が市内にも残っています。今回はその中から、木町観音堂の観音講を紹介します。

 西本町4-8にある木町観音堂は、東本町の言成地蔵堂とともに「言成地蔵(いいなりじぞう)」の昔話で知られるお地蔵様を境内に奉安(たいあん)していることで有名なお堂です。「木町」とは古い町名で、今は西本町と栄町の人々によって維持されています。ここでは昔から女性たちによる観音講が行われ、今も毎月2回、境内の掃除とお参りが続けられています。特に8月の観音講は1年でもっとも盛大に行われています。

 観音講は、講中(講のメンバー)の女性たちによって開催されますが、8月の講では観音堂保存会の男性らも参加し、幟(のぼり)を立てたり本堂を幕で飾るなどの手伝いをします。お供え物などの用意ができたら、講のはじまりです。  
 昨年参加した講中(こうちゅう)の女性は5人で、木魚(もくぎょ)や鳴り物を盛大にならしながらお経を唱えます。そのあとは観音堂保存会のメンバーも加わり、全員で輪になってひとつの大きな数珠を持ち、念仏を唱えながら数珠を回していきます。数珠には白い目印が結びつけてあり、それが自分のところへ回ってきたら頭上に掲げます。これを10周行います。講はこれで終了です。講の後、以前は皆で酒食の席となりましたが、今は寿司折を配っています。

講中の女性らによる読経


皆で大きな数珠をまわす

 
 この講は元々、家中で姑にあたる立場の女性が参加するならわしで、今参加している人たちのお姑さんが参加されていたころは、毎日のように観音堂に集まって、掃除のついでにおしゃべりを楽しみ、境内には近所の 子どもたちが遊ぶ声が絶えなかったそうです。しかし次第に参加する人が少なくなり、講の存続が危ぶまれています。また、境内や本堂の維持管理費に充てていたお賽銭もめっきり減ったといいます。

 みなさんの近くにも、地域の人の手で大切に守られてきた「場」が、今もあるかもしれません。

【広報みしま 令和6年2月1日号掲載】