(第172号) ~国際交流の大きな一歩~ グラント大統領歓迎セレモニー (平成14年9月1日号)

西洋風椅子
 欧米人の来訪がまだ珍しかった明治初めの頃、三島は私たちの想像以上に国際交流が盛んな土地だったのです。

 そのひとつはキリスト教の布教のため外国人宣教者が三島に逗留したことです。特に明治21年(1888)に薔薇女学校(県内最初の私立女学校)が開校すると、アメリカの婦人達が教師として赴任し、授業は全て英語で行われる徹底したキリスト教主義の教育が行われました。
 この他、明治12年(1879)、グラント前アメリカ合衆国大統領の静岡県主催の歓迎セレモニーを、三島で催しています。
 グラント氏は南北戦争で功績のあった将軍で大統領を二期勤めた大物政治家でした。
 県内発行の新聞は連日、グラント将軍の動向と、歓迎セレモニーの準備状況を詳細にわたって報道しています。

 8月16日、会場は落成したばかりの西洋式校舎、公立三島学校の講堂(現在の三島市役所の地に議場として昭和35年まであった)とされ、宿泊所は長く本陣であった世古六太夫家(現、みずほ銀行付近)と定められました。
 この日はすぐ近くの三嶋大社の祭典日で、伊豆一円から祭りに繰り出す人々が集まります。三島の人々は祭とグラント将軍接待とで大忙しでした。
 東京上野の精養軒からコックと食器を、岩科村(松崎町)からは上等の牝牛1頭を取り寄せています。料理は鶏肉・魚・牛肉を使った18品目の料理・菓子と清酒・洋酒という豪華なもの。
机や椅子も西洋風の立派なものが新調されました。(写真)

 出席者はグラント氏と同行した子息を主賓に大迫静岡県令(知事)、野村神奈川県令、杉宮大輔と接待委員など15人。この他、寄木細工の書棚・針箱・時計、竹細工、掛川葛布、熱海雁皮紙、沼津の茶など県内の特産物が贈られた記録が残され、はなばなしい歓迎ぶりがうかがわれます。
 (広報みしま 平成14年9月1日号掲載記事)