地域別主要農産物の生産状況

斜面畑
 水稲は中郷地区が中心で、栽培面積も単位面積当りの収量も多いようです。  この地区は、境川の下流、大場川・狩野川の氾濫(現在では大場川も狩野川もりっぱな堤防ができていますが、以前はよく氾濫しました。御園方面の家が土盛りをして建てられたり、家の周囲に大木があるのも、そのためです。)による肥えた沖積土の影響と、畑地が少ないために農家 の手が水田に集中するため、三島市の米作地域としてよく知られています。

 広い田んぼがどこまでも続き、その田んぼの中に農道が交差しています。まるで古代の条里制のようにりっぱに区画整理されているのが中郷の水田地帯です。農機具の利用により作業能率がよくなったので少人数でもやっていけますが、ほんとうに農業で生活をしようとするのには20ha以上の水田が必要です。

 今では園芸を主体としたり、若い者が勤めに出るなど兼業化がすすんでいます。中郷という地区は市街地にも近く、交通の便もよいので通勤者のアパートを経営するなど様々な農業の形が存在します。

 施設園芸は水田地帯の中の大型ハウスで行われています。ハウス内では、いままで露地栽培であった、いちご・トマト・なすの栽培が多く、その中心地は中郷・錦田地区です。田んぼの中の道路の両側はところどころ埋め立てられ、住宅の建てられたところもあります。また水田の中には、今は鉄骨だけのビニールハウスも見られます。この地域ではビニールハウスに期待をよせています。管理に手間がかかりますが都市近郊で栽培し出荷するには向いているため、生産量も増えています。しかし、商品として市場に出荷するためには量的にまとまらないといけないので農協を通して出荷しています。また、この地区の一部では酪農を行なっている農家もあります。

 麦類・野菜類は箱根山ろくの畑作地帯を多くもつ坂地区を中心に栽培されています。この地区の畑作地はもと急傾斜地で、農機具が十分に活用できませんでしたが、1973(昭和48)年から約2年の耕地整理で急傾斜がかなり、だん斜面に整理され、広々とした耕地にかわりました。総工費4億円の大工事で地元負担4割でしたが、大型の農機具を使うことができるようになり、かんがい施設もこの農道下に敷設され、よくなりました。

 ここは根菜類の栽培に向かっているようですが、商品として出荷するまでには大変な手間がかかります。農家にはかなりの種類の農業機械や農機具が保有され、どの農家も機械化農業が一般化しています。生産に要する経費として肥料代、農薬代、購入した機械の支払い代金等の出費で、実収入は思ったほどではないのが実状です。 出荷は自分のトラックで直接市場に運ぶか、共同出荷を行なっています。しかし、野菜は、市場価格の変動が激しく、その年の天候の影響も大きいため、農業経営のむずかしさがあります。

 水田と畑作が中心の北上地区は、三島市内の農業地域の中では最も都市化の激しい地域で、千枚原団地をはじめ、富士ビレッジ・芙蓉台・光ヶ丘・旭ヶ丘・三恵台などの住宅地が広がっています。 農業は、佐野地区で行なわれている畑作・酪農が主なものとなりましたが、この地区の住宅化も進行しており、佐野見晴台(三島ビューティータウン)も造成されました。

 耕地の多少・土壌の条件、その他新しい機械と技術・農作物の価格の問題・農業に対する関心の度合いなどが重なり合って地域の特色をつくっています。 また、農業のかかえている問題には複雑なものがあり、解決には時間がかかりそうです。

                 ●三島市教育研究会「三島」より