「三島市助役に関する措置請求書に伴う出張(9/8、9/22、9/26、10/1、11/26、12/15、12/18分)についての伺い及び復命書」の一部不開示決定に対する異議申立てについて[諮問第2号]

平成11年1月29日 三情審第20号

審査会の結論

請求行政文書に関し不開示と決定された部分のうち、以下に掲げる部分については、これを開示することが妥当である。
(1) 出張先の相手方である静岡県総務部市町村課職員の職名および氏名ならびに静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会の職員の職名および氏名
(2) 出張先の相手方である弁護士の住所および氏名
(3) 静岡県総務部市町村課への旅行(出張)にかかる復命の内容のうち、特定の住民監査請求にかかわる個別具体的な法律相談の内容を除く、そのほかの部分
(4) 静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会への旅行(出張)にかかる復命の内容のうち、三島市の機関が独自に要約した部分(No.2)以外の記載部分
(5) 弁護士に相談するための旅行(出張)にかかる復命の内容のうち、特定の住民監査請求にかかわる個別具体的な法律相談の内容および当該住民監査請求に関する通知文案を除く、そのほかの部分

異議申立ておよび審査の経緯

(1)  本件の異議申立人〇〇〇さん(以下「申立人」という。)は、平成10年3月5日、三島市情報公開条例(以下「条例」という。)5条に基づき、実施機関である三島市監査委員(以下「実施機関」ともいう。)に対して、「三島市助役に関する措置請求書に伴う出張(9/8、9/22、9/26、10/1、11/26、12/15、12/18分)についての伺い及び復命書」の開示を請求し、同行政文書における「出張先の相手方住所及び氏名並びに復命書別紙」の部分を不開示とする決定(以下「本件処分」という。)を、平成10年3月20日付けで受けた。
 これに対し申立人は、同年4月16日、本件処分を不服として実施機関に対して異議申立てを行ない、本件は同年5月1日付けで、三島市監査委員より条例18条に基づき当審査会に諮問されるところとなった[当審査会諮問第2号]。
(2)  当審査会の審査においては、実施機関側が平成10年5月22日に理由説明書を提出し、これに対し申立人は同年6月4日に意見書を提出した。そして同年8月26日には、実施機関意見聴取とともに、申立人の申請にかかる口頭意見陳述が行なわれた。その後同年9月25日に実施機関より理由説明書(補充)の提出があり、これに対し申立人は同年10月16日に意見書(補充)を提出した。

審査会の判断

(1) 本件の争点に関する実施機関の説明および申立人の主張について
 本件において異議申立ての対象とされた不開示情報は、「三島市助役に関する措置請求書に伴う出張(9/8、9/22、9/26、10/1、11/26、12/15、12/18分)についての伺い及び復命書」(以下「本件文書」という。)の中に記されている「出張先の相手方住所及び氏名並びに復命書別紙」の部分(以下「本件不開示部分」と総称する。)である。
 既に開示された情報によると、三島市監査委員事務局職員の「出張先の相手方」とは、静岡県総務部市町村課等、静岡県市長会、財団法人静岡県都市自治振興協会の職員および弁護士であり、「復命書別紙」とは、静岡県総務部市町村課への出張(平成9年9月8日)、静岡県市長会・財団法人静岡県都市自治振興協会への出張(同年11月26 日)および弁護士に相談するための出張(同年9月9日、 9月22日、9月26日、10月1日、12月15日、12月18日)についての復命書である。
 (1) 実施機関が主張する不開示の根拠および理由を要約すると、以下のとおりである。
  ア 監査委員事務局職員の出張先の相手方である静岡県総務部市町村課等の職員名は、特定の個人が識別できる情報であり、条例8条1号本文に該当する(理由説明書)。
 条例8条1号は、いわゆる「個人識別型」を基本として「個人に関する情報」を不開示情報として定め、その中から開示すべきものを除く手法をとっている。したがって、「個人に関する情報」のうち開示すべき情報となるのは、条例8条1号ただし書の6項目のいずれかに該当する場合に限られる。静岡県総務部市町村課等の職員名は、戸籍や身分に関する情報として「個人に関する情報」に該当するが、条例8条1号ただし書の6項目のいずれにも該当しない(理由説明書(補充))。
 なお、静岡県総務部市町村課等の職員名は、条例8条7号にいう不開示情報にも該当するが、その理由は弁護士の住所および氏名を不開示とする理由と同様である(意見聴取、理由説明書(補充))。
  イ 監査委員事務局職員の出張先の相手方である弁護士の住所および氏名は、特定の個人が識別できる情報であり、条例8条1号本文に該当する(理由説明書)。
 また、弁護士の住所および氏名は、条例8条7号にいう不開示情報にも該当する。なぜならば、本件出張は、弁護士等から住民監査請求に関する法令等の見解、助言を得るためのものであり、それは一連の監査事務執行上の情報として、条例8条7号にいう「監査に関する情報」であって、開示することにより、「市民の側に、無用の誤解や憶測を生じさせるおそれがある」とともに、「このことにより弁護士が警戒し、今後、監査結果を導き出すための情報収集が困難となり、一連の監査事務が遅れるなどして、60日以内に適正な監査を行えず、今後の監査業務の公正かつ円滑な執行に支障を及ぼすおそれがある」からである(意見聴取、理由説明書(補充))。
 さらに、弁護士の住所および氏名は、これを開示することにより、「市民に無用の誤解や憶測を生じさせ、その結果、見解、助言の提供者である弁護士の名誉、社会的評価、社会的活動の自由が損なわれ、当該弁護士の事業活動に支障を及ぼすおそれがある」ので、条例8条3号にも該当する(理由説明書(補充))。
  ウ 静岡県総務部市町村課等、静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会への旅行(出張)にかかる復命の内容については、これを開示することにより、「当該相手方が警戒し、今後、当該課題に対応するための自由な意見交換を基調とする協議等ができなくなるおそれがあり、市と静岡県等との協力関係が将来にわたって損なわれるおそれがある」ので、条例8条4号に該当する(理由説明書)。同復命の内容が公表されると、今後、静岡県総務部市町村課等において口頭による相談を受けられなくなるおそれがあり、そのことが三島市全体に影響を及ぼすことをおそれるのである(意見聴取)。
 さらに、これを開示することにより、「当該相手方が警戒し、今後、率直な意見の交換が将来にわたって不当に損なわれるおそれがあり、また、監査委員及び監査委員事務局にとっても、今後の意思決定の中立性の確保が不当に損なわれることから」、条例8条6号にも該当する(理由説明書)
  エ 弁護士に相談するための旅行(出張)にかかる復命の内容については、これを開示することにより、「今後、当該請求に係る監査結果を出す過程における率直な意見の交換や意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり」、条例8条6号に該当する(理由説明書)。
 また、復命の内容は、「監査に関する情報」であり、当該復命の内容を開示することにより、「今後、地方自治法に定められた監査委員制度の中で求められている監査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり」、条例8条7号にも該当する(理由説明書)。
 (2) 申立人は、本件処分を取り消し、本件文書の全面開示を求めるものであるが、その主張を要約すると、以下のとおりである。
  ア 出張先の相手方である静岡県総務部市町村課等の職員名は、条例8条1号本文にいう「個人に関する情報」に該当しない(意見書(補充))。
 条例8条1号は個人情報を保護するための規定であるが、この場合、保護される利益とはあくまで、「個人としてのプライバシー」である。条例8条1号はいわゆる「個人識別型」を基本にしているが、このことからして、ただ単に「個人が識別されること」をもって直ちにこれを不開示とするのは、拡大解釈による濫用であり、条例1条(目的)に反する(意見書、意見書(補充))。いやしくも公務員が、その職としての氏名が開示されたとしても、当該個人の「個人としてのプライバシー」が侵害されることにはならない(意見書)。条例8条1号ただし書カの規定により三島市職員の職および氏名は開示されることとなるが、それは、「市職員の氏名が明らかになったとしてもそのことが当該個人のプライバシーを侵害しない」という考え方、ないし「公務員の職としての氏名は、プライバシー保護よりも説明責任の履行の要請が優先される」という考え方に基づくものであり、そのような考え方からすれば、県職員の氏名もまた同様に解すべきである(意見書(補充))。また、仙台地裁判決(1996年7月29日)は、公務員の職務遂行に際して記録された情報に含まれる当該公務員の役職や氏名は、原則として「個人に関する情報」には当たらないと判示するが、そのような判例を重視して解釈されるべきである(意見書(補充))。
 実施機関は、「個人に関する情報」のうち開示すべき情報となるのは条例8条1号ただし書の6項目のいずれかに該当する場合に限られると主張するが、それらの6項目に直接的に該当しないものであっても、これを即「不開示」としなければならないということではなく、むしろ情報公開制度における説明責任や開示義務の履行という要請から個別具体的に斟酌されるべきものである。したがって、6項目に該当しないからといって即「不開示」とするのは、条例解釈の誤りである(意見書(補充))。
  イ 弁護士の住所および氏名は、条例8条1号本文にいう「個人に関する情報」から除かれている「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当する(意見書)。
 また、弁護士の住所および氏名が開示されたとしても、「弁護士活動が脅かされたり、その活動に支障を及ぼすおそれはない」ので、条例8条3号にいう不開示情報にも該当しない(意見書、口頭意見陳述)。
 さらに、条例8条7号が不開示とする行政運営情報は、「執行前あるいは執行の過程において情報を公開することにより、当該事務事業の実施に著しい妨げとなり、又は特定の人に不当な利益を与える結果となる」ことを避けるために規定されているのであるから、本件のような「既に執行されてしまった以前の、過去における情報」は、そもそも条例8条7号の規定に当てはまらないのである。かりに、「過去における執行過程の情報の開示が、将来における同様の執行に支障をきたす」ことがありうるとしても、実施機関が「支障となる理由」として挙げている、「弁護士が警戒する」、「情報収集が困難になる」との「理由説明」は空論にすぎず、この程度の「おそれ」で不開示とするのは条例1条(目的)に反する(意見書、意見書(補充))。
  ウ 静岡県総務部市町村課等、静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会への旅行(出張)にかかる復命の内容を不開示とすることは、条例8条4号の拡大解釈による濫用であり、また条例8条6号の適用の誤りである。
 条例8条4号は、「市と国等との協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるもの」と規定しており、ただ単に「おそれがある」だけでは不開示とすることはできないのである。三島市作成の『情報公開事務の手引』(21頁)によれば、「相当の理由があるものとは、不開示情報を定めるに当たって、単に市と国等との協力関係又は信頼関係が損なわれると認められるだけでは足りず、社会通念上も、客観的に合理的なものでなければならず、不開示情報をより限定しようとするものである」。ところが、本件不開示処分においては、「社会通念上も、客観的に合理的な判断はなんら考慮されていない」のである。「社会通念上も、客観的に合理的な判断」をもってすれば、協議内容は当然に開示されるべきものに当たる。なぜならば、県との協議内容を知ることは、「市民による市政の監視及び市政への参加の充実」(条例1条)にとって不可欠なことであり、そのことを通じてはじめて市と県との中立、公正な協議が確保されていくものである(意見書)。
 条例8条6号は、「意思形成過程」に関する情報に対し、意見交換や意思決定の中立性が不当に損なわれることなどを回避するために定められたものである。請求行政文書にかかる住民監査請求は既に却下されており、現時点において、それは「意思形成過程」に関する情報ではなく、「意思決定後」の情報になっている。したがって同号によって守られるべき利益は既になくなっている(意見書)。
  エ 弁護士に相談するための旅行(出張)にかかる復命の内容を不開示とすることは、条例8条6号の適用の誤りである。その理由は、静岡県総務部市町村課等への旅行(出張)にかかる復命の内容を不開示情報とすることが条例8条6号の適用の誤りであるとする理由と同じである(意見書)。
 また、同復命の内容は、条例8条7号にいう不開示情報にも該当しない。実施機関は、開示することにより「監査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」と述べるが、情報公開法要綱案の「考え方」によれば、「支障」の程度は、「名目的なものでは足りず実質的なものが要求され」、「おそれ」の程度も「単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性が当然に要求されることとなる」。さらに「支障」の内容について、三島市作成の『情報公開事務の手引』は、「開示することにより、その事務・事業の本来の目的が失われ、又は経費が著しく増大し、若しくは実施時期が大幅に遅れるなど、当該事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(24頁)としている。これらのことから、ただ単に「監査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のみをもって不開示とするのは不当である(意見書)。弁護士との協議内容を開示したとしても監査事務の本来の目的はなんら失われないし、むしろ「中立・公正」な監査事務は、このような弁護士との協議内容が明らかにされてこそ確保できるはずである(意見書)。
(2) 本件不開示部分の条例8条1号該当性についての審査会の判断
 本件不開示部分のうち、実施機関が条例8条1号に該当すると主張するものは、出張先の相手方である静岡県総務部市町村課等の職員名および弁護士の住所・氏名である。当審査会が本件諮問についての審査を行なうに当たり、不開示部分を含む本件文書を閲読したところ、不開示部分には静岡県総務部市町村課等の職員の氏名のほか職名ならびに静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会の職員の職名および氏名が記されているので、これらについても審査対象とする。
 条例8条1号は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は他の情報と照合することにより識別され得るもの」については、同号ただし書の6項目に該当するものを除き、不開示とする。
 静岡県総務部市町村課等の職員の職名および氏名ならびに静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会の職員の職名および氏名は、「個人に関する情報」ではあるが、公務員または公共的団体の職員の「職務の遂行に係る情報」であるので、その私生活上の情報とは異なり、プライバシー保護になじむものではなく、市民の知る権利に基づく開示の対象とすることに公益上の理由があると判断される。これは、市職員の職務遂行にかかわる職・氏名を例外的に開示すべき個人情報と定める条例8条1号カ、および「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を「個人に関する情報」から除いている同条1号本文の、類推適用であると解される。
 また、監査委員事務局職員の出張先の相手方である弁護士の住所および氏名は、申立人の主張のとおり、「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当するので、条例8条1号本文にいう「個人に関する情報」からは除かれるべきものである。
(3) 本件不開示部分の条例8条3号該当性についての審査会の判断
 本件不開示部分のうち、実施機関が条例8条3号に該当すると主張するものは、出張先の相手方である弁護士の住所および氏名である。
 三島市作成の『情報公開事務の手引』が述べるように、条例8条3号にいう事業活動情報の開示にともなう不利益のおそれを判断するに当たっては、「法人等又は事業を営む個人の当該事業の性格、規模、事業内容等に留意しつつ、当該情報の開示をした場合に生ずる影響を個別具体的に慎重に検討した上で、客観的に判断する必要がある」(20頁)。
 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、依頼人のために必要な各種の法律事務を行なうことを職務とし、地方公共団体からの法律相談に応じることも弁護士としての事業活動の一環である。「三島市助役措置請求」について監査委員事務局職員から相談を受けた弁護士の氏名等が開示された場合、そのことが当該弁護士の社会的評価や弁護士としての事業活動になんらかの影響を及ぼすことがあるとしても、それは、市民の知る権利の保障の重要性にかんがみるとき、条例の適用上で不開示理由となりうる程の不利益と解することはできない。
(4) 本件不開示部分の条例8条6号該当性についての審査会の判断
 本件不開示部分のうち、実施機関が条例8条6号に該当すると主張するものは、静岡県総務部市町村課等、静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会への旅行(出張)にかかる復命の内容ならびに弁護士に相談するための旅行(出張)にかかる復命の内容についてである。
 条例8条6号は、「開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情報としている。
 本号は、行政内部または行政間の審議、検討等に関し、その適正な意思決定が損なわれないようにするために設けられたものである。
 申立人は、開示請求の対象とする行政文書にかかる住民監査請求は既に却下されており、現時点においては、それらの文書は「意思決定後」の情報であるので、条例8条6号によって守られるべき利益は既になくなっていると主張する。しかし、過去の文書であっても、将来の意思形成において活用される可能性がある限り、条例8条6号にいう不開示情報の対象になりうると判断する。そこで、不開示とされた各復命書における不開示理由の当否を個別具体的に判断することにする。
 静岡県総務部市町村課等への出張にかかる復命書には、「三島市助役措置請求」にかかわる法律問題についての静岡県市町村課職員の教示内容が記されている。そして本件における教示内容は、特定の住民監査請求にかかわる個別具体的な法律相談にかかるものであり、これを開示すると今後における同種の法律相談に際しての「率直な意見の交換」を不当に損なうおそれがあるものと判断する。
 静岡県市長会および財団法人静岡県都市自治振興協会への出張にかかる復命書には、「三島市助役措置請求」にかかわる事実についての調査結果が記されている。その内容には、それらの団体と意見を交換したものではなく三島市の機関が独自に要約した記録の部分(No.2)を含み、その部分を開示すると、「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」を生ずるものと判断する。
(5) 本件不開示部分の条例8条7号該当性についての審査会の判断
 本件不開示部分のうち、実施機関が条例8条7号に該当すると主張するものは、(a)静岡県総務部市町村課等の職員名、(b)弁護士の住所・氏名、および(c)弁護士に相談するための出張にかかる復命の内容についてである。
 条例8条7号は、「監査、検査、許可、認可、入札、取締り、争訟、交渉、契約、試験、調査、研究、人事管理その他実施機関の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情報とする。本号にいう「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」を解釈するにおいては、その「支障」の程度は名目的なものでは足りず、実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が当然に要求されるものと解すべきである。
 本件不開示部分のうち、上記(a)、(b)および(c)のいずれの情報も監査業務執行上の出張にかかわる情報であるので、それは「監査に関する情報」に該当する。申立人は、「既に執行されてしまった以前の、過去における」情報はそもそも条例8条7号の対象外である旨、主張するが、過去の監査についての情報であっても、これを開示することにより将来の同種の監査業務の適正な遂行に支障が生ずることがありうるので、申立人のこの点についての主張は失当である。
 ここで、弁護士に相談するための出張にかかる復命書には、「三島市助役措置請求」にかかわる法律問題についての弁護士の助言・指導の内容が記され、当該住民監査請求に関する通知文案が添付されている。このような特定の住民監査請求にかかわる個別具体的な法律相談により実施機関が取得した情報は特定の監査の執行過程の情報であるという特殊性から、そのような特定の住民監査請求にかかわる個別具体的な法律相談の内容に関しては、これを開示することにより、今後の監査業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものと判断する。
(6) 以上により、その余の点については判断する必要がなく、「審査会の結論」のように結論する。

審査会の処理経過

平成 10 年 5 月 1 日 審査諮問書の受理
同年 5 月22日 実施機関からの理由説明書の受理
同年 6 月 4 日 異議申立人からの意見書の受理
同年 7 月16日 諮問の審査(平成10年度第1回審査会)
同年 8 月26日 実施機関からの意見聴取および異議申立人による口頭意見陳述(平成10年度第2回審査会)
同年 9 月25日 実施機関からの理由説明書(補充)の受理
同年 9 月30日 諮問の審査(平成10年度第3回審査会)
同年10月16日 異議申立人からの意見書(補充)の受理
同年10月30日 諮問の審査(平成10年度第4回審査会)
平成11年1月 6 日 諮問の審査および答申書の確定(平成10年度第5回審査会)

三島市情報公開審査会

  • 兼子 仁(会長)
  • 三橋 良士明(職務代理者)
  • 大村 知子(委員)