「平成12年5月16日に県に提出された社会福祉施設整備(事業者が川原ケ谷地区に計画しているものに限る。)に係る概要調書並びに平成12年6月20日に県に提出された社会福祉施設整備(事業者が川原ケ谷地区に計画しているものに限る。)に係る意見書及び計画書」の一部不開示決定に対する異議申立てについて[諮問第3号]

平成13年10月24日 三情審第17号

審査会の結論

 本件の異議申立てにかかる不開示情報のうち、別表「異議申立てにかかる不開示情報」の「審査会の結論」欄に○印を記載した情報は開示することが妥当である。×印を記載した情報を不開示としたことは妥当である。

異議申立ておよび審査の経緯

(1)  本件の異議申立人○○○さん(以下「申立人」という。)は、平成12年6月21日、三島市情報公開条例(以下「条例」という。)5条に基づき、実施機関である三島市長(以下「実施機関」ともいう。)に対して、「平成12年5月16日に県に提出された社会福祉施設整備(事業者が川原ケ谷地区に計画しているものに限る。)に係る概要調書並びに平成12年6月20日に県に提出された社会福祉施設整備(事業者が川原ケ谷地区に計画しているものに限る。)に係る意見書及び計画書」の開示を請求した。実施機関は、この開示請求の対象公文書として、①「平成12年度社会福祉法人設立の概要調書」、②「平成13年度社会福祉施設整備計画の概要調書」、③「資金計画の概要調書」、④「社会福祉施設整備計画書」および添付書類(配置図・建物平面図・敷地断面図、借入金償還計画表、借入金償還財源内訳表)、⑤「社会福祉法人設立計画書」および添付書類(役員予定者名簿、評議員予定者名簿、役員予定者の履歴・身分証明書・印鑑登録証明書、現金贈与予定者の贈与契約書・印鑑登録証明書・預金残高証明書、不動産贈与予定者の贈与契約書・印鑑登録証明書・当該不動産の登記簿謄本、所有権移転登記確約書、償還金贈与契約書・償還贈与額年次表・印鑑登録証明書)ならびに⑥「社会福祉施設整備計画に対する意見書」(以下これらの文書を「本件文書」という。)が該当するとして、本件文書のうち、行政文書開示請求拒否決定通知書(三福介第54号)別紙「不開示情報となる情報」の「記載内容」欄に掲げる部分を不開示とする決定(以下「本件処分」という。)を、平成12年8月2日付けで行なった。
 これに対し申立人は、同年8月31日、本件処分のうち、「(1)役員予定者の履歴各項目及び印影、(2)身分証明書に係る各部分、(3)印鑑登録証明書に係る各部分及び印影、(4)残高証明書に係る各部分及び印影、(5)贈与契約書に係る印影、(6)所有権移転登記確約書に係る印影、(7)償還金贈与契約書に係る印影、(8)借入金償還財源内訳表のうち、贈与者及び贈与承継者の生年月日・年齢、職業又は勤務先、前年度の課税所得、扶養親族の状況」の部分を除く不開示決定に対して、その取消しを求めて、異議申立てを行ない、本件は、同年10月16日付けで三島市長より条例18条に基づき当審査会に諮問されるところとなった[当審査会諮問第3号]。
(2)  当審査会の審査においては、実施機関側が平成12年11月6日に理由説明書を提出し、これに対し申立人は同年11月27日に意見書を提出した。そして平成13年1月24日には、実施機関からの意見聴取が行なわれ、同年2月28日には、申立人からの口頭意見陳述が行なわれた。また、同年2月22日に実施機関より理由説明書(補充)の提出があり、これに対し申立人からは、同年3月12日に意見書(補充)が提出されている。

審査会の判断

(1) 異議申立てにかかる不開示情報の特定について
 当審査会は、異議申立てにかかる不開示情報(以下「本件不開示情報」という。)を特定するに先だって、実施機関が開示請求の対象公文書に該当するとした各文書と実施機関作成の行政文書開示請求拒否決定通知書別紙「不開示情報となる情報」とを照合調査した。その結果、実施機関作成の別紙には「社会福祉施設整備計画書」の添付書類である「配置図・建物平面図・敷地断面図」について記載漏れのあることが判明した。別紙に記載がないものの、実際には、実施機関は「配置図・建物平面図・敷地断面図」についても開示請求の対象文書として取扱い、その公文書中の作成者欄の部分を不開示として、申立人に対して開示決定している。かくして申立人においては既に「配置図・建物平面図・敷地断面図」の写しの交付を受けていることから、当審査会としては、実施機関作成の別紙には記載漏れの誤記があったものとして、申立人の異議申立てにかかる不開示情報には「配置図・建物平面図・敷地断面図」の各公文書中の不開示部分も含まれるものとして取扱うこととした。
 申立人は本件処分のうち特定部分を除く不開示決定について異議申立てをしていることから、当審査会として認定した異議申立てにかかる不開示情報は別表「異議申立てにかかる不開示情報」の「記載内容」欄に記載の各情報である。
(2) 本件文書の性格および当審査会の判断の基準時について
 本件文書は、三島市内において社会福祉法人を設立し社会福祉施設の整備をしようとする者が、社会福祉法31条に規定する法人設立にかかる所轄庁への認可申請および「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費国庫負担(補助)金交付要綱」(平成3年11月25日付け厚生省社第409号)等に基づく社会福祉施設整備事業費補助金の交付申請に先だって、静岡県に置かれている「社会福祉法人設立及び社会福祉施設整備審査会」の事前審査を受けるために三島市より静岡県東部健康福祉センタ-所長に提出された関係書類の副本である。
 「社会福祉法人設立及び社会福祉施設整備審査要綱」(静岡県)の定めるところによれば、健康福祉センタ-所長は、提出された計画書等を関係法令等に基づき審査のうえ静岡県健康福祉部長に提出し、健康福祉部長は、「社会福祉法人設立及び社会福祉施設整備審査会」において「全県的立場から審査を行い、法人設立及び施設整備方針を決定する」ものとされている。平成12年度において、「社会福祉法人設立及び社会福祉施設整備審査会」は平成12年8月8日に開催され、本件にかかる社会福祉法人の設立および施設整備計画は不採択となった。
 本件処分は平成12年8月2日付けで行なわれているところ、当審査会は、いつの時点を基準にして、その適否を判断すべきかということが問われる。当審査会は、行政処分の違法性を争う裁判手続とは異なり、行政不服審査法上の異議申立ての趣旨が行政庁に対して異議申立てにかかる処分の見直しを求めるものであり、当審査会の任務はその見直しの適否等について意見を具申することにあると考え、その判断の時期は、異議申立てに対する決定時あるいはそれに近い答申時とするのが相当と考え、答申時を基準としてその判断を行うこととした。
(3) 本件不開示情報の条例8条1号該当性について
① 本件不開示情報のうち、社会福祉法人の役員の氏名・年齢・職業・特殊関係の有無・役員の資格・他法人代表者への就任状況・福祉関係履歴、寄付者氏名・役職・寄付金額、設立準備事務の実務担当者氏名・職業・連絡先住所・電話番号、法人代表者(予定者)氏名・住所・職業、施設長(予定者)氏名・住所・職業、土地の贈与者氏名、土地の購入資金提供者氏名など、本件処分通知書別紙において実施機関が条例8条1号の「個人に関する情報」に該当するとした不開示情報について、実施機関は、それらの情報は、戸籍や身分に関する情報、経歴に関する情報、財産や収入状況に関する情報であり、個人のプライバシ-は保護されなければならないことを不開示理由として主張する(理由説明書)。 これに対して申立人は、実施機関の述べる不開示理由は、「実施機関の主観を、短絡的かつ機械的、また安易に示したにすぎず」、プライバシ-の侵害性や「公益上の開示の必要性」などの検討およびその結果についての記載がなく、「合理性に基づく個別具体的な論拠」が示されていないと主張する(意見書)。さらに、本件文書は、社会福祉法人設立準備会が特別養護老人ホ-ムを建設するに必要とされる申請文書であって、きわめて「公的性格の強いもの」であり、「審査の公正さをより高めていく」という「公益上の必要性」が認められるので、役員、施設長の氏名等の個人情報は、条例8条1号エに該当し、開示されなければならないと主張する(補佐人陳述要旨)。
② ところで、条例8条1号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は他の情報と照合することにより識別され得るもの」は、ただし書に定める場合を除き不開示とする旨を規定し、個人識別性のある「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)を原則として不開示としている。
 当審査会は、本件不開示情報のうち本件処分通知書別紙において実施機関が条例8条1号本文の不開示情報に該当するとした情報のすべてが個人識別性のある個人情報に該当するものと判断するが、問題はそれらの個人情報がただし書に定める除外情報に該当するか否かである。
 社会福祉法31条1項によれば、「社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもって少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない」こととされ、同条2項は、「設立当初の役員は、定款で定めなければならない」と規定する。「社会福祉法人の認可について」(昭和39年1月10日・社発第15号)に添付の別紙2「社会福祉法人定款準則」第4条によれば、社会福祉法人には役員として理事および監事を置くこととされ、その附則に設立当初の役員として理事長、理事および監事の氏名を記載することになっている。また「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成9年3月28日・社援企第68号)によれば、「新たに法人を設立して整備する施設については、設立準備委員会の名称に加え、役員就任予定者も公表すること」とされている。以上のことから、当審査会は、社会福祉法人の役員である理事長、理事および監事ならびに法人設立代表者(予定者)の氏名はもともと公にすることを前提とした個人情報であると判断する。
 評議員は社会福祉法人の議決機関である評議員会の構成員であり(社会福祉法42条参照)、役員である理事、監事とは区別されているが、「社会福祉法人の認可について」(昭和39年1月10日・社発第15号)に添付の別記第2「社会福祉法人設立認可申請等副申書様式例」の様式第1「社会福祉法人○○○設立認可申請副申書」の「5 役員について」の記載によれば、法人設立の認可の審査においては役員に準じた取扱いをすることになっており、静岡県東部健康福祉センタ-所長からの三島市長宛て通知「平成13年度社会福祉施設整備に係る審査会用書類の提出について」(東健地第8-7号・平成12年5月24日)においても、社会福祉法人設立計画書に添付の役員予定者名簿に評議員名簿を加えることとされている。
 社会福祉法人は社会福祉事業を行うことを目的として設立された公共性の高い法人であり、社会福祉法24条は「経営の原則」として「事業経営の透明性の確保を図らなければならない」と定めている。また社会福祉法人は社会福祉施設の整備・運営について多額の公費補助を受けており、その補助金交付事務のいっそうの透明性の向上が求められていることに鑑みるならば、社会福祉法人の議決機関の構成員である評議員および社会福祉施設の責任者である施設長の氏名については、役員である理事および監事に準じた取扱いが妥当であると判断する。
 以上のことから、本件処分通知書別紙において実施機関が条例8条1号本文の「個人に関する情報」に該当するとした不開示情報のうち、社会福祉法人の役員(理事長、理事、監事)、法人設立代表者(予定者)、評議員および施設長(予定者)の氏名は、個人情報ではあるが、もともと公にすることが予定されていた情報であり、市民の知る権利に基づく開示の対象とすることに公益上の理由があるものとして、条例8条1号ただし書エの規定により開示されるべきものと判断する。
③ 「社会福祉施設整備計画に対する意見書」に記載の「希望者名」とは、三島市内において社会福祉施設整備を予定し静岡県の事前審査を受けるために計画書を提出しようとする者のことであり、「社会福祉法人設立及び社会福祉施設整備審査要綱」(静岡県)2条によれば、本件の場合、法人設立代表者(予定者)が計画書を提出することになっている。したがって「希望者名」とは法人設立代表者(予定者)の氏名のことであり、上記と同様の理由により開示されるべきものと判断する。
④ 実施機関は、理由説明書(補充)において、「平成13年度社会福祉施設整備計画の概要調書」、「資金計画の概要調書」および「社会福祉施設整備計画書」に記載の用地費、評価額および購入金額については、「土地の位置など他の情報と照合することにより、所有者及び地価を類推することが可能となるため、他の情報と照合することにより識別され得る財産に関する情報であり、条例8条第1号の個人情報にあたる」との不開示理由を追加主張する。
 しかしながら、実施機関は、本件社会福祉施設整備計画にかかる土地(以下「本件土地」という。)の現所有者名(三島市ほか1名)を既に申立人に開示しており(「平成13年度社会福祉施設整備計画の概要調書」の開示情報に含まれている)、いまさら三島市以外の土地所有者名を個人情報として保護する必要性はないものと判断する。
 一般論として、用地費、評価額および購入金額は、その土地の所有者にとっては譲渡価格であり、その譲渡価格は個別取引による資産の価値を意味するという点においてプライバシ-性が認められるものの、本件の場合、三島市所有地部分には個人情報としての性質はなく、仮に三島市所有地以外の土地部分についての評価額が推定できるとしても、既に実施機関が開示した情報により土地の所在地および面積が明らかになっていることから、その評価額は当該土地に付随する情報であるとも解することができるのであり、個人情報として保護する必要性よりも、三島市所有地を含む土地情報として、市民の知る権利に基づく開示の対象とすることの公益上の必要性が優ると解することが妥当である。したがって、用地費、評価額および購入金額は、条例8条1号ただし書エに定める除外情報に該当し、開示されるべきものと判断する。
⑤ 実施機関は、理由説明書(補充)において、「事業費の額の一部が開示されることにより、用地費や寄付金を類推することが可能となるため他の情報と照合することにより識別され得る財産に関する情報であり、条例8条第1号の個人情報にあたる」との不開示理由を追加主張する。
 しかしながら、事業費の額の一部および合計が開示されたとしても、借入金と寄付金の合計額が推測できるものの、寄付金額は類推不能であり、また借入先および寄付者は必ずしも個人に限られるものではないことから、事業費の金額は、個人識別性のある個人情報に該当しないものと判断する。
(4) 本件不開示情報の条例8条3号該当性について
① 実施機関が条例8条3号に規定する不開示情報に該当するとしたものは、借入金額、運転資金必要見込額、建設自己資金、借入金償還金、合計、用地費、造成費、基本設計費、建物工事費、工事事務費、冷暖房工事費、浄化槽工事費、昇降機工事費、備品費、その他、計、寄付金額、利息、県元利補給金額、設置者負担分、土地評価額、土地購入金額、基本財産の土地平米数、施設整備資金、法人運転資金など、本件処分通知書別紙に記載の情報であり、実施機関は、それらの情報は「事業者の評価・信用に関する情報、事業者等の内部管理に関する情報その他開示することにより社会的活動の自由が損なわれると認められる情報」であると主張する(理由説明書)。また実施機関は、用地費、評価額および購入金額については、「土地の売買予定価格が開示されると、今後の用地交渉に支障を来すおそれもあり、条例第8条第3号の事業活動情報として、法人の競争上の地位を害するおそれがあるため保護しなければならない」との不開示理由を追加主張する(理由説明書〔補充〕)。さらに実施機関は、建物工事費および実事業費の各項目については、「金額が開示されることにより、建設時の入札に支障を来すおそれがあり、条例第8条3号の事業活動情報として、法人の正当な利益を害するおそれがあるため保護しなければならない」ことを追加主張する(理由説明書〔補充〕)。
 これに対して申立人は、実施機関の述べる不開示理由は「実施機関の主観を、短絡的かつ機械的、また安易に示したにすぎず」、「競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するかどうかの個別具体的判断」をしておらず、「合理性に基づく個別具体的な論拠」が示されていないと主張する(意見書)。また申立人は、用地費にかかる土地は市有地であり、市民の財産であることの公益性を重視して開示されるべきこと、建物工事費および実事業費の各項目の金額は建設時の入札に際しての予定価格を意味するものではないことから入札の公正さに支障をもたらすおそれがないこと、国庫補助等の交付についての公正さを確保するうえでも開示されるべきことを主張する(意見書〔補充〕)。
② ところで、条例8条3号は、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下『法人等』という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれがあるもの及び実施機関からの要請を受けて公にしないとの約束の下に任意に提供されたもので、法人等又は個人における常例として公にしないこととされているものその他の当該約束の締結が状況に照らし合理的であると認められるもの。ただし、当該法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる人の生命、身体若しくは健康への危害又は財産若しくは生活の侵害から保護するため、開示することがより必要であると認められるものを除く」と規定する。
 この規定の解釈・運用に際して留意すべきことは、この規定にいう「競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれ」を判断するに当たっては、「法人等又は事業を営む個人の当該事業の性格、規模、事業内容等に留意しつつ、当該情報の開示をした場合に生ずる影響を個別具体的に慎重に検討した上で、客観的に判断する必要がある」(三島市作成の『情報公開の手引』20頁)ということである。
③ 本件文書は社会福祉法人を設立し社会福祉施設の整備をしようとする場合の事前審査のための書類である。「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成9年3月28日・社援企第68号)によれば、施設整備にかかる審査においては、「協議対象施設の選定が偏っていないか、既存の施設に比べ新設の法人が不当に有利な扱いになっていないか、行政関係者が関わっている施設が優先されているのではないか等の疑惑を招くことがないよう、適正かつ公平な審査に努められたいこと」、そして「国庫補助協議を行う施設については、各都道府県において、設置主体の名称及び事業計画(施設名称、施設種別、定員、工事区分)の公表を行われたいこと」としている。
 また社会福祉法44条2項によれば、「社会福祉法人は、毎会計年度終了後2月以内に事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書を作成しなければならない」ものとされ、同条4項は、それらの「書類及びこれに関する監事の意見を記載した書面を各事務所に備えて置き、当該社会福祉法人が提供する福祉サ-ビスの利用を希望する者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない」としている。「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の一部の施行(平成12年6月7日)及びそれに伴う政省令の改正について」(平成12年6月7日・障第451号・社援第1351号・児発第574号)は、社会福祉法44条の趣旨について、「社会福祉法人の事業の透明性を確保し、かつ福祉サ-ビスの利用者が社会福祉法人の提供する福祉サ-ビスの選択に必要な判断材料となる情報を入手できるようにするため、財務諸表等必要な書類の閲覧を可能にする必要がある。このため社会福祉法人に対し、事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書並びにこれに関する監事の意見を記載した書面を各事務所に備え置き、当該社会福祉法人が提供するサ-ビスの利用希望者等の利害関係人から請求があった場合には、請求権の濫用と認められるような例外的な場合を除き、原則として閲覧に供しなければならないこととした」と述べる。これらの通知は社会福祉法人の財務諸表等の開示義務について述べたものであり、本件文書に直接かかわるものではないが、社会福祉法人事業の透明性の確保の原則を踏まえ、かつ社会福祉施設の整備に対して多額の公的補助が行われることを考慮すると、社会福祉法人の認可および補助金交付の審査過程においても、その透明性の向上を図ることが求められているのである。
 一般に、「資金計画の概要調書」に記載の事業費や「社会福祉施設整備計画書」に記載の実事業費(補助対象事業費)は、実施機関が主張するように「事業者の評価・信用に関する情報、事業者等の内部管理に関する情報」に当たるものの、不開示理由となる「当該法人等又は当該個人の競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれ」の存否については、上記のことを考慮したうえで個別具体的にしてかつ客観的に判断すべきであると考えられる。
 以上のことからすると、実施機関が条例8条3号に規定する不開示情報に該当するとしたもののうち、自己資金額、寄付金額、借入金額および借入金償還計画表については、本件文書にかかる審査は終わっているものの、なお今後において審査を受ける可能性を否定できないとするならば、それらの情報は審査における競争上の地位および利益にかかわるものであり、その開示には、「競争上の地位、財産権その他の正当な利益を害するおそれ」があるものと判断する。
④ 実施機関は、理由説明書(補充)において、用地費、評価額および購入金額については、「土地の売買予定価格が公開されると、今後の用地交渉に支障を来すおそれもあり、条例第8条3号の事業活動情報として、法人の競争上の地位を害するおそれがあるため保護しなければならない」との不開示理由を追加主張する。しかしながら、既に実施機関が申立人に開示したところによれば、本件土地の所有者は三島市と法人設立代表者(予定者)であることから、本件において用地費、評価額および購入金額を開示することが、今後の用地交渉を具体的に左右する要素になるものとは考え難い。したがって上記の実施機関の追加主張は成り立たないものと判断する。
⑤ 実施機関は、理由説明書(補充)において、建物工事費および実事業費の各項目については、「金額が開示されることにより、建設時の入札に支障を来すおそれがあり、条例第8条3号の事業活動情報として、法人の正当な利益を害するおそれがあるため保護しなければならない」ことを追加主張する。しかしながら、「資金計画の概要調書」に記載の建物工事費および「社会福祉施設整備計画書」に記載の実事業費(補助対象事業費)の各項目記載の金額は、必ずしも入札に際しての予定価格に相当するものではないことから、この点についての実施機関の追加主張は成り立たないものと判断する。
⑥ 実施機関作成の本件処分通知書別紙「不開示情報となる情報」に記載漏れのあった「配置図・建物平面図・敷地断面図」における作成者欄の不開示決定について、当審査会が実施機関にその根拠を尋ねたところ、条例8条3号に該当するとのことであった。
 しかしながら、作成者欄に記載されている内容は、それらの図面の設計事業者名、住所、電話番号、1級建築士事務所登録番号および建築士氏名であり、それらの情報を開示することにより、当該事業を営む者の「競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは客観的に認めがたいことから、作成者欄に記載の情報はすべて開示されるべきものと判断する。
(5) 以上により、「審査会の結論」のように判断する。

審査会の処理経過

平成12年10月16日 審査諮問書の受理
同年11月 6日 実施機関からの理由説明書の受理
同年11月27日 異議申立人からの意見書の受理
同年12月19日 諮問の審査(平成12年度第1回審査会)
平成13年 1月24日 実施機関からの意見聴取(平成12年度第2回審査会)
同年 2月22日 実施機関からの理由説明書(補充)の受理
同年 2月28日 異議申立人による口頭意見陳述(平成12年度第3回審査会)
同年 3月12日 異議申立人からの意見書(補充)の受理
同年 3月30日 諮問の審査(平成12年度第4回審査会)
同年 5月 2日 諮問の審査(平成13年度第1回審査会)
同年 5月28日 諮問の審査(平成13年度第2回審査会)
同年 6月25日 諮問の審査(平成13年度第3回審査会)
同年 9月 3日 諮問の審査(平成13年度第4回審査会)
同年10月12日 諮問の審査および答申書の確定(平成13年度第5回審査会)

三島市情報公開審査会

  • 兼子 仁(会長)
  • 三橋 良士明(職務代理者)
  • 大村 知子(委員)

別表 異議申立てにかかる不開示情報

文書名・箇所 記載内容 審査会
の結論
平成12年度社会福祉法人設立の概要調書(法人設立用) Ⅱ 役員構成   氏名
年齢 ×
職業 ×
特殊関係の有無 ×
役員の資格 ×
他法人代表者への就任状況 ×
福祉関係履歴(資格) ×
Ⅲ 建設自己資金内訳 ①寄付金 寄付者氏名 ×
役職 ×
金額 ×
Ⅳ 借入金償還計画 ①借入先 金額 ×
②充当財源の調達内容 寄付者氏名 ×
役職 ×
金額 ×
Ⅴ 運転資金内訳 ①必要見込額 施設運営費金額
計金額
②充当財源の調達内容 寄付者氏名 ×
役職 ×
金額 ×
Ⅵ 寄付金等統括表   寄付者氏名等 ×
建設自己資金 ×
借入金償還金 ×
合計 ×
Ⅶ 職員等 ③設立準備事務の実務担当者 氏名 ×
職業 ×
連絡先・電話番号 ×
平成13年度社会福祉施設整備計画の概要調書 Ⅱ 事業費・財源 資金計画事業費 用地費
造成費
基本設計費
建物工事費
備品費
その他
借入金(事業団) 金額 ×
寄付金 金額 ×
Ⅲ 法人の概要 代表者(予定者) 氏名
住所 ×
職業 ×
主な理事(予定者) 氏名
住所 ×
職業 ×
施設長(予定者) 氏名
住所 ×
職業 ×
Ⅴ 整備計画・用地関係チェックリスト 4 用地関係 土地の贈与者 ×
氏名
資金提供者氏名 ×
資金計画の概要調書 (共通) 事業費 用地費 金額
造成費 金額
基本設計費 金額
建物工事費 金額
備品費 金額
その他 金額
合計 合計
資金内訳 借入金 金額 ×
寄付金 金額 ×
合計 金額 ×
②借入金 借入額 金額 ×
利息 金額 ×
借入金 金額 ×
県元利補給 金額 ×
設置者負担分 金額 ×
②-イ 設置者負担分内訳 寄付予定者 氏名 ×
年齢 年齢 ×
職業 職業 ×
寄付総額 金額 ×
③建設財源としての寄付金 寄付予定者 氏名 ×
年齢 年齢 ×
職業 職業 ×
寄付金額 金額 ×
社会福祉施設整備計画書(様式第2号) 実事業費(補助対象経費) 連絡先 住所 ×
主体工事費 金額
工事事務費 金額
冷暖房工事費 金額
浄化槽 金額
昇降機 金額
備品費 金額
その他 金額
金額
財源の内訳 借入金 金額 ×
自己資金 金額 ×
金額 ×
土地の状況 現所有者 住所 ×
取得の方法 (評価額) 金額
寄付 寄付者氏名 氏名 ×
法人との関係 役職 ×
購入 財源 金額
配置図 作成者
建物平面図 作成者
敷地断面図 作成者
借入金償還計画表(別添様式1)   借入額 金額 ×
利率 利率 ×
償還年度 年度 ×
償還額 金額 ×
財源充当額 金額 ×
(個人別・財源別)
償還財源充当内訳 金額 ×
借入金償還財源内訳表(別添様式2) 1 贈与 氏名 氏名 ×
法人との関係 役職名 ×
最多負担年度の贈与額 金額 ×
贈与継承者・氏名 氏名 ×
贈与継承者・法人との 関係 役職 ×
社会福祉法人設立計画書(様式第1号) 設立代表者 氏名 氏名
職業 職業 ×
住所 住所 ×
電話番号 電話番号 ×
設立事務担当者 氏名 氏名 ×
職業 職業 ×
住所 住所 ×
電話番号 電話番号 ×
設立当初の資産 (基本財産) 土地 面積
(運用財産) 土地取得資金 金額 ×
施設整備資金 金額 ×
法人運転資金 金額 ×
金額 ×
贈与(寄付)金額 贈与(寄付)者氏名 氏名 ×
土地取得資金 金額 ×
施設整備資金 金額 ×
法人運転資金 金額 ×
合計 金額 ×
役員予定者名簿(別添様式1)   氏名 氏名
年齢 年齢 ×
職業 職業 ×
親族等特殊関係の有無 有無 ×
役員の資格(知識経験) ○印 ×
役員の資格(地域福祉関係) ○印 ×
役員の資格(地域代表) ○印 ×
役員の資格(施設長) ○印
役員の資格(その他) ○印 ×
他の社会福祉法人の代表者への就任状況 法人名 ×
備考 職業・役職 ×
評議員予定者名簿(別添様式1)   氏名 氏名
年齢 年齢 ×
職業 職業 ×
親族等特殊関係の有無 有無 ×
役員の資格(知識経験) ○印 ×
役員の資格(地域福祉関係) ○印 ×
役員の資格(地域代表) ○印 ×
役員の資格(施設長) ○印
役員の資格(その他) ○印 ×
他の社会福祉法人の代表者への就任状況 法人名 ×
贈与契約書(別添様式3例)     贈与者氏名 ×
受贈者氏名 ×
贈与金額 ×
贈与者住所 ×
不動産贈与契約書(別添様式4例)     贈与者氏名 ×
受贈者氏名 ×
贈与者住所 ×
受贈者住所 ×
所有権移転登記確約書(別添様式5例)     確約者住所 ×
確約者氏名 ×
設立代表者代理人氏名 ×
償還金贈与契約書(別添様式6例)     贈与者氏名 ×
設立代理人氏名 ×
保証人氏名 ×
贈与金額 ×
贈与者住所 ×
設立代理人住所 ×
保証人住所 ×
償還贈与額年次表(別添様式6例-別記)     贈与者氏名 ×
贈与金額 ×
(年次別)
贈与金額(総額) ×
社会福祉施設整備計画に対する意見書 (様式第3号)   希望者名 氏名
希望者の住所 住所 ×
地域住民の施設設置に対する意見等 照会者 ×