(第247号)三四呂人形にみる遊びの世界 (平成20年12月1日号)

 三島市出身で人形作家の、野口三四郎が創作した「三四呂人形」は、幼い頃の山や川で遊んだ懐かしい記憶を思い出させてくれる素朴な人形として、多くの人々に親しまれています。今回は、影ふみや水遊びなど昭和初期のこどもたちの遊びをテーマとした作品を紹介します。

〈水あそび〉  
 あふれんばかりの三島の清流で、裸ん坊で遊ぶ二人の男の子を主題とした作品です。手のひらに捕ったばかりの魚をのせ、得意気に話をしている様子が伝わってきます。これは第一回人形芸術展で、芸術院賞を獲得した作品です。

水辺興談(すいへんきょうだん)
247水辺興談(すいへんきょうだん)

〈影ふみ〉  
 日が落ちかけた夕方、三人の少女が長く伸びた影をふみながら鬼ごっこに興じている情景を表現た作品です。  
 少女のステップの軽快さには張り子の紙の軽さがうまく生かされています。車による事故の心配のいらない古き良き時代の風景のひとつです。

影ふみ
247水辺興談(すいへんきょうだん)

〈かくれんぼ〉  
 桜の木の下で、手で目隠しをして座っているお坊さんという設定ですが、江戸時代の有名な禅僧、良寛をモチーフにしているといわれています。子どもとかくれんぼをしていて、夕方になって子どもたちが黙って帰ってしまったことを知らず、鬼役だった良寛が朝まで探していたという逸話を三四郎ならではの手法で上手に表現して います。

かくれんぼ
247かくれんぼ

〈ブランコあそび〉  
 庭先でブランコ遊びをしながら木につり下げられた鳥かごを微笑ましく見つめる少女、そんなゆったりした春の情景が表現されている作品です。この作品は、わずかな振動により女の子を乗せたブランコや鳥かごが揺れるように工夫されています。風の揺らぎや穏やかな春の様子までをも表現したかった三四郎の苦心がうかがえます。

春日庭(かすがにわ)
247春日庭(かすがにわ)

【平成20年 広報みしま 12月1日号 掲載記事】