(第365号)近代三島をつくった人々(文化編)(平成30年10月1日号)

今回は企画展「近代三島をつくった人々」から、幕末・明治に三島で活躍した人々の蔵書について紹介します。


明治時代前半は、政治・行政・産業・教育などさまざまな面で社会が大きく変わりました。そして、この地域で変革の担い手となったのは、江戸時代に村の名主や三島宿の宿役人をつとめていた地域の有力者たちでした。

彼らの多くは、幼いころから高度な教育を受けており、さまざまな事業を進める傍ら、俳句や和歌などの文化的な活動にも熱心に取り組んでいました。


例えば、佐野村の勝俣家は江戸時代には名主をつとめており、江戸時代後期から明治時代にかけて俳人として活躍した滝之本連水を輩出しています。 連水の父、常昭も花岳の号を持つ俳人でした。

安久村の杉山家は、江戸時代には名主などの村役人を、明治時代には戸長・副戸長、中郷村村長などをつとめていた家柄です。江戸時代後期から明治初期にかけての当主の信安は、牧之郷の飯田家からの婿養子で、当時伊豆では名を知られていた国学者・歌人である飯田守年の義弟にあたります。それもあってか、信安は和歌を得意としていました。


彼らの家は、多くの蔵書を抱えていました。その内容は、漢籍など江戸時代の基本的な教養となるもの、和歌や俳句など自分の文化活動に関するものなどが多くを占めていますが、以下で紹介するような西洋文明を紹介したものなども含まれています。

(1)『学問ノススメ』 福沢諭吉著、杉山家旧蔵
学問ノススメ

(2)『西洋事情』 福沢諭吉著、勝俣家旧蔵  海外の政治・経済・技術などを紹介しています。
西洋事情

(3)『文明開化』 加藤祐一著、杉山家旧蔵  著者は大阪商法会議所(現大阪商工会議所)設立に貢献しており、西洋の経済制度を広く紹介しました。
文明開化


これらの蔵書からは、地域社会のリーダーたちが明治時代の社会の変化に対応するため、新しい制度や技術に関する知識を得ようとしていた姿勢がうかがわれます。


企画展「近代三島を作った人々-後期:文化編-」を開催! 開催期間は10 月13 日(土)~平成31 年1月3日(木)です。


【広報みしま 平成30年10月1日号掲載記事】