世界の童話おじさん

三島ゆかりの作家とその作品

三島の風物詩を書き続けた小出正吾

小出正吾
 「喜作は、きょうの昼間、浦島さんのお祭りで見て来たにぎやかな露天のありさまを、思い浮かべていました。
 おもちゃ屋、金魚屋、綿菓子屋、くだもの屋、絵本屋、花火屋……風船がふわふわ、ゆれています」

 昭和13年の『蛙の鳴くころ』の一節である。
 児童作家小出正吾ぐらい三島を愛し続けた作家も類をみない。
『白い雀』『雨と太陽』『ジンタの音』『かっぱ橋』と名作揃いでその数も多い。
 ある児童文学者の回想録として、『童話から童話へ』と題する自伝もある。

「この時、一族郎党は帰郷するし、隣村近郷の人びとは町に群がり、空には名物の花火があがり、大社境内には見せ物小屋が軒を並べ、町内には三島囃子の山車がごった返すのだから、子どもらの興奮は絶頂に達するのだ」

といった調子で、浦島さん、清流の水車、子どものとびまわる竹林寺など三島の風物詩がそのまま童話となっていて、こよなく楽しい。
 日本児童文学界の最長老としての長い間の活躍、世界の文学者たちとの交流、三島の文化活動の先哲としてその存在は大きかった



紹介にあたりましては「市制50周年記念誌」を参考にさせていただきました。