三代相伝のみしまの文学者

三島ゆかりの作家とその作品

大岡博、大岡信、大岡玲の文学

大岡博

 浪の秀(ほ)に裾洗はせて大き月
 ゆらりゆらりと遊ぶがごとし

「三島町歌」(昭和6年)、「三島市制施行祝賀行進曲」(昭和16年)、「三島夜曲」(昭和20年)などの作詞で知られている大岡博の代表歌が、昭和61年10月1日に、三島市立楽寿園に建立された。

 この碑に、詩人である大岡信が、

「歌人大岡博。明治40年静岡市生。少年期より三島に定住、同市および県東部各地で教育者として活躍、県教職員組合委員長、初代県立児童会館長をも務めた。
 昭和9年『菩提樹』創刊、窪田空穂門の重鎮として歌に命をかけ、清貧の生涯を送る。
 歌集『溪流』『南麓』『童女半跏』『春の鷺』、歌論集『歌林提唱』『作歌みちしるべ』。碑の歌は大いなる月影に自己の生命観を投入した秀吟で、作者自讃の作でもあった。昭和56年、74歳歿」

とプロフィールをまとめている。
「窪田先生から上京して歌に専念したらと勧められたが、中央の名声よりも、三島を離れず地域の教育と歌に打ち込んだおやじの生き方はいかにも静岡県人らしい、文明度の高いものだったかもしれません」

とも、

「おやじの学問はとても筋のいいものだった」
大岡信

とも厳父大岡博のことを語る大岡信は、昭和6年三島生まれ、三島南小、沼津中学(現沼津東高)、一高を経て東大文学部卒業、東京芸大教授及び日本ペンクラブ会長として活躍された。
現在、日本現代詩人会会長、日本芸術院会員
連句、連詩の普及に尽力されている。
 1997(平成9年)文化功労者顕彰
 2003(平成15年)文化勲章受賞
 2004(平成16年)レジオン・ド・ヌール勲章受賞

 詩人、評論家としてそのペンの力は鋭くて深い。
 美術、芸能などにも彩筆をふるい現代日本を代表する作家の一人として国際的にも評価されている。

 評論『紀貫之』で読売文学賞、朝日新聞連載の『折々のうた』で菊池寛賞を受賞、『大岡信著作集』(全15巻、黄土社)などと著書は多数に及び、最近作の『詩人・菅原道真』(岩波書店)は名著である。詩集『故郷の水へのメッセージ』は全編ふるさと三島へのほとばしる思いがうたわれている。この作品は、現代詩花椿賞を受賞している。

大岡玲
 大岡博、信の相伝文学人生が素晴らしいうえに、大岡信の子息、大岡玲が『表層生活』で芥川賞を受賞している。先に、『黄昏のストーム・シーディング』で三島賞を受賞している俊秀である。三代にわたるスケールの大きい文学者ということはふるさとを同じくするものとして畏敬にあたいする。

 なお、信氏の奥さんである深瀬サキさんは戯曲作家でもある。


紹介にあたりましては「市制50周年記念誌」を参考にさせていただきました。