「97年度4月から2月までの住民監査請求書とその結果報告書」の一部不開示決定に対する異議申立てについて[諮問第1号]

平成10年10月30日 三情審第17号

審査会の結論

 請求行政文書に関し不開示と決定された保養所名については、これを開示することが妥当である。

異議申立ておよび審査の経緯

(1)  本件の異議申立人〇〇〇さん(以下「申立人」という。)は、平成10年3月2日、三島市情報公開条例(以下「条例」という。)5条に基づき、実施機関である三島市監査委員(以下「実施機関」ともいう。)に対して、「97年度4月から2月までの住民監査請求とその結果報告書」等の開示を請求し、同行政文書における個人情報部分および特定の「保養所名」を不開示とする決定を、平成10年3月17日付けで受けた。
 これに対し申立人は、同年4月16日、「保養所名」の不開示に対してのみ異議申立てを行ない、本件は同年5月1日付けで、三島市監査委員より条例18条に基づき当審査会に諮問されるところとなった[当審査会諮問第1号]。
(2)  当審査会の審査においては、実施機関側が平成10年5月22日に理由説明書を提出し、これに対し申立人は同年6月4日に意見書を提出した。そして同年8月26日には、実施機関意見聴取とともに、申立人の申請にかかる口頭意見陳述が行なわれている。

審査会の判断

申立人と実施機関との間における本件の争点に関し、当審査会は以下のとおり判断する。
(1)  本件において異議申立ての対象とされた不開示情報は、住民監査請求書および結果報告書中に記された国家公務員保養所の名称である。
 実施機関は、不開示の根拠および理由につき、特定の保養所名が公開されると、「当該法人の競争上の地位を害するおそれがある」ため、条例8条3号本文にいう法人秘情報に該当する、と主張した(理由説明書)。そしてその趣旨は、公費会食の場と住民監査請求において指摘されたことによりサービス業にとって不利益を受ける可能性があるからだと説明している(意見聴取)。
 それに対して申立人は、三島市作成の『情報公開事務の手引』において、条例8条3号にいう法人情報開示にともなう不利益のおそれは、「影響を個別具体的に慎重に検討した上で、客観的に判断する必要がある」と記されていること(20頁)を援用し、本件保養所名の不開示は当該条例条項の拡大解釈に過ぎ、求められる「相当の合理性、客観性」が欠けていると主張している(意見書)。また申立人は、公的保養所ゆえ公開すべき理由が強いと述べている(口頭意見陳述)。
(2)  本件において開示された情報内容によると、「三島市助役措置請求書」なる住民監査請求の文書において、伊豆長岡の公務員保養所(特定名)において「米国・カナダ都市行政調査報告検討会」が開かれ、公費で私的な懇親会合がなされたものと記されている。また、同じく「三島市助役に関する措置請求の却下について(通知)」という三島市監査委員の監査報告書において、「請求の趣旨」中においてのみ同上の保養所名の記述があり、これが不開示とされている。
 してみると、本件行政文書における国家公務員保養所の名称は、住民監査請求において請求者住民によって記された情報にほかならない。また同保養所での公費懇親会合のことも、同様である。いずれも市監査委員により公的に事実認定された情報内容ではない。
 したがって、本件行政文書の開示によって、同保養所の名が一般に知られるところとなっても、それに伴なう事実上の結果は、公的に作成された情報の公開によるものではないと認められる。
 そこで、名称の公開により当該保養所にとって事実上若干の不利益が生ずるとしても、それは、市民の知る権利の保障の重要性にかんがみるとき、条例の適用上で不開示理由となりうる程の法人不利益と解することはできない。
(3) 以上により、本件文書における保養所名は、申立人による異議申立てのとおり、条例上これを開示することが妥当であると判断される。

審査会の処理経過

平成10年5月1日 審査諮問書の受理
同年 5 月22日 実施機関からの理由説明書の受理
同年 6 月 4 日 異議申立人からの意見書の受理
同年 7 月16日 諮問の審査(平成10年度第1回審査会)
同年 8 月26日 実施機関からの意見聴取および異議申立人による口頭意見陳述(平成10年度第2回審査会)
同年 9 月30日 諮問の審査および答申書の確定(平成10年度第3回審査会)

三島市情報公開審査会

  • 兼子 仁(会長)
  • 三橋 良士明(職務代理者)
  • 大村 知子(委員)