三島の水~富士山からのおくりもの~

三島の湧水はどこからくるの?

 約200万年前に伊豆半島が本州に衝突しました。そして約50万年前には、愛鷹山や箱根山の噴火が始まり、富士山が今の形になったのは、約1万年前です。三島の湧水群は、富士山から流れ出た溶岩の末端部で湧き出しています。
 三島湧水群の水が集まる地域の境界は、宝永山を頂点として東は御殿場駅、乙女峠付近から箱根の外輪山、箱根峠から国道1号沿いに三島へと至ります。一方、西の境界は、宝永山から十里木、愛鷹山の位牌岳、東名沼津インターチェンジ付近から三島へ至り、その中の約360平方キロメー トルの面積に降った雨の一部が地下水となり、三島まで流れてきています。
 JR御殿場線より西を富士山地域、東を箱根地域とすれば、三島の湧水群の水は、富士山地域から約3分の2、箱根地域から約3分の1が供給されています。富士山2、箱根1のブレンド水が三島の湧水です。
湧水からのおくりもの(湧水しくみ)
三島湧水群のメカニズム

今から約1万年前の富士山の噴火によって、約30kmに渡る三島溶岩流と呼ばれる水を良くとおす地層がつくられました。
 その地層の影響で、上流域でふった雨や雪が、地下にしみ込み、溶岩流の中をゆっくりと移動して、下流の三島駅周辺の三島湧水群や、さらに下流の柿田川で湧き出しています。

湧き水の年齢は?

 湧水に年齢があるというと、不思議に聞こえるのではないではないでしょうか。
実は湧水の元はすべて雨水であって、降った雨がどこで地中に浸透し、湧き出しているのかということが年齢に関係します。水に印がついていれば、何処でいつ頃降った雨か分かるわけです。
 しかし、地下水の年代を求める技術がなかった頃には、地下水位の等値線図を描いて予測したり、流速計を井戸の中に入れて速度を実測しました。その後、雨水に含まれている放射性物質の性質から年代が測定できるようになりました。雨は地下に浸透し、地下水となって幾重に滞積する透水層を通過して、下流で地表に湧き出るのが湧水で、 その通過にかかる時間が年代となります。
源兵衛川

 このように富士山の湧水の年齢は測定方法が異なり、また地層中の地下水の流れ方は同じ状態ではありません。 一概には言えませんが、今までに発表されている年齢を紹介しますと、100年以上、約26~28年、約70日と非常にばらつきがあります。いずれにしても、広い富士山麓に降った雨や雪が、長い水脈を通って三島に湧出しているという自然界の不思議さに驚かざるを得ません。

三島の水道水がおいしいのはなぜ?

 「おいしい水」とは、どんな水でしょうか?水の味の感じ方は人によってまちまちですが、「湧き水や井戸水のように地層の中を通ってきた天然の水で、人体に有害な成分を含まず、安全で適度なミネラル成分を含んだ水」と言えるでしょう。また、厚生労働省によっておいしい水の 水質条件も示されています。
 三島市で使用される水道水は、すべて地下水を源とし、伊豆島田水源池と、湧水群のある柿田川から取水される駿豆水道から供給されています。水質はまろやかな軟水で、ミネラル分を表す蒸発残留物が適度に含まれ、水温も最適とされる16度前後、pH値も中性の7.0前後、水の味を損なう有機物の量も非常に少なく、厚生労働省の基準を十分に満たしている安全でおいしい水であることが分かります。
湧水のおくりもの(水質検査結果)
三島市上水道における水質検査成績書より(伊豆島田採水 平成18年度)

名水の恵みは健康長寿の源

 富士の霊峰に降り注ぎ、長い年月地下をゆっくり流れて湧き出る三島の水は、清冽でそれ自体おいしく、厚生労働省の“おいしい水”の基準を十分満たしています。その水質、水量、周辺環境や景観、故事来歴の点からも環境省指定の“名水百選”の基準を満たし、国土交通省選定の”水の郷百選”の中にも選ばれています。
 良き水に恵まれることは、そこに住む人々の生活文化や健康に大切ですが、それを健康増進のために活用する工夫をすれば、その価値はさらに高まります。一般に名水とは茶の湯などに適した水とされています。楽寿園、源兵衛川、白滝・菰池公園などの景観を楽しみながら、いろいろな茶を楽しめれば、三島市民のみならず訪れる人の健康長寿の一助にもなるでしょう。
 名水と言われる水は茶をおいしくします。茶はガンや動脈硬化を予防する作用を持っています。名水はコーヒーもおいしくします。茶やコーヒーを飲み談笑すると脳の老化を防止します。美しい景色を楽しみ、茶やコーヒーを飲み談笑することは、特に高齢者にとっては非常に重要なことで、名水の地はその意味でも貴重といえるでしょう。

コップ1杯の三島の水が心身を健康にする

 私たちは夜寝ているとき、500から1000ccぐらいの汗をかいて水分を奪われていますので、1杯の水はこの脱水を補う効果があります。また、水を飲むことで消化管のぜん動運動を促進させ、空腹感を刺激し、朝食をおいしく頂くことができるのです。何より、1杯の水が気分的に一日の始まりとして爽快感を感じさせます。
 三島の水は富士山などからの地下水を水源としています。微量ですが、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルや二酸化炭素を含み、新鮮で爽やかな味がします。川から取水して水道水にしている大都市の水のように、カルキ臭などを気にすることがありません。また、胃内視鏡で胃液を見ると、こちらの人たちのほうが大都市の人たちに比べ、透明できれいな傾向にあると思います。
 水の効能については、利尿・発汗・解熱・催眠(就寝前にコップ1杯の水を飲むのが快眠を誘うのに効果的)、新陳代謝促進作用などの役割があります。当然、老廃物を排出し、新陳代謝を促すことは良く知られています。良い水をたくさん飲んでみずみずしくなめらかな状態を取り戻して維持することを想像してみてください。のどか渇いたとき、1杯の水がもたらす効果を想像してみてください。生き返るという言葉がぴったりです。さあ、毎朝、おいしい水を1杯飲むことから始めてください。

おいしい三島の水を伝えるために

 私たちの暮らしに欠かすことのできない、おいしい三島の水は先達からの贈り物であり、また、後世の人たちに引き継ぐべき預かり物です。富士山などの地下で育まれ、磨かれた三島の湧水は、年々その量が減少する傾向にあります。未来に渡って湧水の恵みを受け継いでいくために、市民や企業が節水や地下水涵養に取り組むのは当然です。三島市では雨水を無駄にせず、ろ過して効率よく大地に浸透させたり、雨水浸透施設を住まいなどに設置したり、節水コマの無償配布なども進めています。
 また、毎日の暮らしの中で水を大切にするルールを守ることが、かけがえのない三島の湧水を守ることにつながります。例えばシャワーの節水、洗顔や歯磨きの時、蛇口を出しっぱなしにしない、洗濯で風呂の残り湯を利用するなど、ちょっとした注意や工夫でできるものです。せせらぎの中や川辺にゴミが捨てられると、水辺環境はすぐに壊れてしまいます。
 湧水復活に向けて、私たち一人一人が節水に心がける毎日の積み重ねが大切です。
※この情報は、平成12年3月に三島市・三島名水調査研究会が作成したパンフレットから抜粋し、最新の数値に修正したものです。

ミシマバイカモ
●きれいな水が育む可憐なミシマバイカモ
 ミシマバイカモはキンポウゲ科の水生植物で、縁色のやわらかい糸のような細く裂けた葉(細裂片)をつけ、直径1から1.5センチメートルほどの梅の花に似た、白い可憐な花が咲きます。花は5月から9月にかけて多く咲きます。楽寿園の小浜池で発見されたので、ミシマの名がつきました。きれいな冷たい水の中で、しかも1日最低5時間以上日光が当たらないと育たないため、かつては市内のあちこちで見られたミシマバイカモも、湧水の減少とともに絶滅してしまいました。
 その後、ミシマバイカモを保護し育成する施設として「NPO法人グラウンドワーク三島」の参加団体である「三島ゆうすい会」を中心に「三島梅花藻の里」で保護育成活動を続けています。ミシマバイカモが育つ水辺環境を永遠に受け継ぎたいですね。

●源兵衛川に舞うホタル
 水と緑が豊富な源兵衛川流域には様々な生き物が生息しています。なかでも、5から6月にかけて自生したホタルが舞う様には、訪れる人がみな思わず感嘆の声を上げてしまいます。市街地の中心部で自然のホタルが見られるのです。これは、ホタルの幼虫が食べるカワニナ等の貝類が育つ条件、つまり水草や藻が豊富なことや、安定した水温、また草むらがあり、適度に蛇行した河川というホタルの成育条件が保たれているからです。これは、三島の清流と、この水辺環境を守る人々の熱意に支えられています。

●うなぎを磨く三島の湧水
 おいしいと評判の三島のうなぎ。浜名湖などの産地から三島に運ばれてきた活きウナギは、水立て場で約1週間ほど湧水にさらされます。この1週間でウナギのお腹に残った餌や泥などが吐き出されます。よって余分な脂肪も落ち、身がぎゅっと引き締まった、歯ごたえのある味へ変わっていくのです。うなぎ料理は湧水のめぐみであり、水の良し悪しで決まると言えますが、まさにそのとおりなのです。