農作物の被害を防ぐために ~イノシシの場合~

現在、三島市では銃器及びわなによるイノシシの捕獲を行っておりますが、一定の効果はあがっているものの、さらに向上させることは難しい状況にあります。
 皆様に現状でできる対策をとっていただき、銃器による捕獲と合わせることで被害を減らしていきたいと考えています。
 ぜひ皆様のご協力をお願いいたします。

農地をエサ場にしないために

1 集落周辺の環境整備
(1)農地をエサ場にしない取り組み
 農地周辺には、農家にとっては価値のないものでも、鳥獣にとっては餌となるものが数多くあります。  これらを適切に管理することが、鳥獣を農地に引き寄せない第1歩となります。
  • 収穫しない野菜や果樹、間引いた株は農地に残さず、簡単に取られないようにネットで囲んだり、埋設など適切に処理しましょう。
  • 例えば、収穫期が過ぎ出荷が終わったナスやキュウリの株は根本から引き抜き、ほうれん草は耕起しておきましょう。いずれも放置したままでは鳥獣の餌となってしまいます。
  • すでに被害を受けた農作物も、鳥獣にとってはよい餌となってしまいます。そのため、農地にはそのまま放置しないで、ネット防護や土に埋めるなど適切に処理しましょう。
  • 家庭から出た生ゴミ、くず野菜など堆肥がわりに農地や庭先に放置しないで、コンポストなどを利用して堆肥化しましょう。
  • 稲刈り後の秋耕起によって、秋~冬のヒコバエや雑草の発生を抑えましょう。
(2)放置された果樹を伐採もしくは管理する
  • 所有者が不明、あるいは誰も収穫せず放置されたカキ、クリ、クワ、グミ、ビワなどの果樹は、地域で合意した上でできるだけ伐採しましょう。
(3)人家やお墓の周辺に鳥獣のエサとなるものを放置しない
  • 果物、ジュース、菓子などのお墓のお供え物は、お祭りが終わったら持ち帰るようにしましょう。
  • 軒下の干柿、干芋、凍み大根など人家周辺でエサとなりそうな食物は、野生獣の手が届かないように管理しましょう(ネットに入れて干すなど)
  • 野菜などの無人直売所では、簡単に取られない工夫をしましょう。
(4)道路のり面や畦などの雑草を管理する
  • イノシシの隠れ場所となりやすい林縁部の草地は定期的に草刈りするようにしましょう。シートで覆うことで、草刈りを省力化する方法もあります。
2 休耕地や耕作放棄地の管理
  • 休耕地や耕作放棄地では、野生鳥獣のエサ場や隠れ家にならないように、定期的に雑草を刈るか、耕転をして雑草の生育を抑えましょう。
  • 人手だけでは十分な草刈りができない休耕地や耕作放棄地は、家畜(牛や羊など)を放牧したり、防護柵で囲んだりする方法もあります。
  • 休耕地や耕作放棄地がモザイク状に散らばっていると野生獣が進出しやすくなるため、農地の利用集積を図り、草刈りや牛の放牧などで管理する方法もあります。

イノシシの行動的特徴と被害防止のポイント

行動的特徴 ポイント
 イノシシは臆病で、警戒心の強い動物であるため、藪の中から田畑等、開けた場所に出るときは慣れている場所であっても必ず一旦停止して周囲の安全を確認する。  田畑周辺の耕作放棄地や田畑に隣接した林地や竹林の草刈りを行うことでイノシシの警戒心を高めることができる。
 イノシシは嗅覚が優れにおいに敏感であるが、視覚も重要であり、何事も必ず目と鼻によってものを確認する。  視覚情報が重要であることから、田畑を視覚的に遮断することで効果を期待できる。
 イノシシは跳躍力に優れ、助走なしで1m以上(最大1m20cm程度)の高さを飛び越えることができる。
 ジャンプするときは障害物から20~40cm程度離れた場所から踏み切って飛ぶ。
 跳躍するときの踏切位置が近いことから、踏切可能な場所を柵から少し遠ざけてやることで跳躍力を抑制することができる。
 イノシシは跳躍力に優れているものの、基本的には障害物の上を越えるよりも下をくぐり抜けることを選択する傾向がある。
 特に障害物に奥行きがあり視覚的、構造的に複雑に見える場合は障害物が低くてもくぐり抜けようとする。
 障害物(防護柵)に奥行きを持たせることで、イノシシの飛び越えを抑制できる。
 また、トタンやネット、金網等を使用する場合は、地面との接地部分を補強し、隙間を作らないようにする。
 イノシシは植物の根や地中のミミズ、昆虫などを摂食するため、土や芝を掘り返したり、石を動かすことを日常的に行っているが、これらの作業を鼻を巧みに使って行っているので鼻の力は非常に強い。  トタンやネット、金網等の下をくぐられないようにするためには、接地面を補強する必要がある。ただし、ネット等の接地面を石で固定するとイノシシの興味を逆に引きつけることとなり、侵入の機会を増やすこととなるので避ける。

イノシシから農地を守るには

 イノシシに対する防護柵としては下表のようになります。  
 それぞれの防護柵には弱点があるので、弱点を補い合えるように組み合わせて設置すると更に効果的です。
 (例)「トタン板」+「電気柵」
   トタン板でほ場の周囲を囲い、その外側に電気柵を設置する。
   トタン板で囲うことで視覚的に遮断でき作物を見えにくくできる。
   外側に電気柵があるのでトタン柵が遠くなり、飛び越えることによる侵入を防げる・・・など。
防護柵 設置方法 設置効果 弱点 価格の目安
トタン板 ・高さは80cmが最適。
・隙間がないように設置すること(特に起伏のある箇所は注意)
・視覚的遮断効果がある。
・材料費が安くて済む。
・高さが不十分なため、飛び越される危険がある。
・押し倒す、鼻で持ち上げられることによる侵入事例が多い。
約200~500円/m程度。
防獣ネット
魚網
・高さは60cm以上とし、ネットを外側に1mほど地面に垂らすと効果が高い。
・網目の大きさは10cm以下が望ましい。
・柔軟性があり、構造が不安定なため侵入防止効果が高い。
・起伏の多い場所でも設置が比較的容易。
・視覚的遮断効果がないため、繰り返し侵入を試みられる。
・網の編目を押し広げられたり、食い破られる場合がある。
(トタン板との併用により、視覚的遮断効果が得られ、ウリ坊の侵入や鼻による持ち上げを防ぐことができる)
約200円/m
金網
フェンス
・1m程度の高さで設置する。
・編目は5cm以下が望ましく、かつ丈夫なもの。
・接地面は、掘り返し防止のため、フェンスを外側に折り曲げるか、地中に埋め込むようにする。
・金網の結束部分を強化したものが出ており、侵入防止効果は高い。
・耐用年数が長い。
・視覚的遮断効果がないため、繰り返し侵入を試みられる。
・接地面の補強がしっかりしていないと、下から侵入される恐れがある。
・編目が大きい(10cm~15cm)とウリボウが潜り抜ける恐れがある。
(トタン板との併用により、視覚的遮断効果が得られ、ウリ坊の侵入や鼻による持ち上げを防ぐことができる)
約200~2,000円/m
ワイヤー
メッシュ
・升目5×5cm、10×10cm、15×15cmのものを使用する。
・支柱をしっかり打ち込む。
・強度が高く、侵入防止効果は高い。 ・視覚的遮断効果がないため、繰り返し侵入を試みられる。
・イノシシが鼻をひっかけるところが多いため、持ち上げられる場合がある。
(トタン板との併用により、視覚的遮断効果が得られ、ウリ坊の侵入や鼻による持ち上げを防ぐことができる)
約250~500円/m
金網忍び返し柵 ・10cm格子の金網を使い、その上部30cmを外側へ20~30度折り返す。
・1~2m間隔に支柱を打ち、金網を針金等で固定する。金網は掘り起こされないようにしっかり差し込み、ペグで補強すること。
・金網の横棒は内側になるよう設置する。
・折り返し30度でイノシシの視点の高さ(70cm)、柵との距離50cmから仰角50度で見上げると折り返さない柵より20cm高く見える。
・これによりイノシシは飛び越すことをあきらめる。
・視覚的遮断効果がないため、繰り返し侵入を試みられる。
・接地面の補強がしっかりしていないと、下から侵入される恐れがある。
(トタン板との併用により、視覚的遮断効果が得られ、ウリ坊の侵入や鼻による持ち上げを防ぐことができる)
約600円/m
電気柵 ・電気さく用ワイヤーを20cm程度の間隔で3段張り程度とし、高さは60cm以上とする。
・支柱の間隔は4~5m間隔とする。
・鼻先が電線に触れる位置に設置する。
・ガイシは必ず外側に向ける。
・電気柵は舗装道路から離して設置し、外側の地面に電気を通さない材質のもの(ゴムマットなど)を置かない。
・適正に管理することが前提となるが、効果は高い。 ・漏電防止のための定期的な周辺の下草刈などこまめなメンテナンスが必要。(電気が通らなければただのワイヤーになってしまい、防護効果はなくなる)
・イノシシの鼻が触れないと効果が低い。
・イノシシがショックを受けたときに驚いて瞬間的に前方に走り出してしまう場合があり、侵入を許すだけでなく電気柵も壊されてしまうことがある。
約200~600円/m

その他

農林水産省のホームページに詳しく書かれていますので、ご参考にしてください。

なお、このページは「野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ、シカ、サル-実践編-(平成19年3月農林水産省生産局発行)」及び「鳥獣被害対策マニュアル(平成20年3月静岡県農林産物野生鳥獣被害対策連絡会発行)」を参考に作られたものです。