「三島市内の井戸所在地、所有者、能力(口径、深度、日量または時間量)」の不開示決定に対する不服申立てについて[諮問第7号]

平成28年8月31日 三情審第3号

審査会の結論

  本件異議申立てにかかる公文書である「三島市内の井戸所在地、所有者、能力(口径、深度、日量または時間量)」については、三島市情報公開条例第8条第1号もしくは同条第3号による一部不開示決定は別論として、同条例第8条第4号の規定による全部不開示決定は、相当ではない。

異議申立て及び審査の経緯

(1)  本件の異議申立人○○○○さん(以下「申立人」という。)は、平成27年6月15日、三島市情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第1項の規定により、実施機関である三島市長(以下「実施機関」という。)に対して、「三島市内の井戸所在地、所有者、能力(口径、深度、日量または時間量)」(以下「本件公文書」という。)の開示を請求した。
 実施機関は、平成27年6月29日、「請求のあった文書に係る情報は、三島市が加入する黄瀬川地域地下水利用対策協議会が使用するものであり、当該文書を開示することにより、同協議会の活動に支障を及ぼすなど、同協議会との信頼関係が損なわれる恐れがあるため」、条例第8条第4号の規定により、本件公文書の全部を不開示とする決定(以下「本件処分」という。)を行った。
 申立人は、平成27年8月13日、本件処分の取消しを求めて、異議申立てを行ったため、実施機関は、同月27日、条例第18条の規定により、当審査会に対して諮問を行った[諮問第7号]。
(2)  当審査会の審査においては、実施機関が平成27年9月9日に理由説明書を提出し、これに対し申立人は同月25日に意見書を提出した。そして同年11月13日には、申立人(補佐人同席)による口頭意見陳述および実施機関に対する意見聴取が行われた。
(3)  当審査会は、平成28年2月18日、本件公文書の開示に関し、黄瀬川地域地下水利用対策協議会(以下「本件協議会」という。)に対して、意見陳述を求めたところ、同協議会より、同年5月13日付で「意見はありません」との回答を得た。

審査会の判断

(1)  実施機関は、条例第8条第4号の規定により、本件公文書を全部不開示としているが、同条項の「協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあると認めるに足りる相当の理由があるもの」かどうかの判断は、客観的に行われなければならないものである。
 そこで、当審査会は、本件協議会に対して、意見陳述を求めたところ、同協議会からの回答は、「井戸情報の開示については、各市町の判断に委ねたため、黄瀬川地域地下水利用対策協議会としての意見はありません」というものであった。
 そうである以上、上記の「協力関係又は信頼関係が損なわれるおそれがあると認めるに足りる相当の理由」が客観的に存するとは言えないことから、少なくとも、条例第8条第4号の規定より、本件公文書を全部不開示とする決定は相当ではない。
(2)  他方で、本件公文書に記載されている情報は、井戸の設置者ないし利用者が非事業者たる個人であれば条例第8条第1号が、事業者であれば同条第3号がそれぞれ定める不開示情報となる可能性がある。
 また、上記の両条項が定める要件の該当性を検討するに当たっては、当該情報が取得された経緯や一部開示の場合の不利益の存否・程度等を井戸情報の項目ごとに判断する必要がある。
  しかしながら、本件審査においては、条例第8条第1号および同条第3号の該当性に関するいずれの立場の意見も提出されておらず、その判断を行うために必要十分な資料も提出されてはいない。
(3)  ところで、水循環基本法は、他の基本法と同じく、法の基本理念を定めるもので、個々の国民の具体的な手続や権利を定めるものではないから、個々の住民による情報公開請求の具体的根拠となり得るものではない。
 他方で、水循環基本法は、第5条で「地方公共団体の責務」を、第8条で「関係者相互の連携及び協力」を、第1条の「目的」の結論部分で、「我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与すること」を定めている。
 そうであれば、水循環基本法の基本理念を実現するために必要となる情報が、 条例第8条第1号カの「人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示することがより必要であると認められる情報」に該当する場合もあり得るし、条例第8条第3号ただし書きの「当該法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる人の生命、身体若しくは健康への危害又は財産若しくは生活の侵害から保護するため、開示することがより必要であると認められるもの」に該当する場合もあり得るところである。
(4)  以上より、当審査会としては、本件公文書の開示に関し、水循環基本法の基本理念なども参考にしつつ、条例の目的および趣旨をより良く実現するために、条例第7条が「実施機関は、開示請求があった場合は、開示請求に係る公文書に不開示情報が記録されているときを除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない」としていることに鑑み、非事業者たる個人が井戸の設置者ないし利用者である場合に関する条例第8条第1号及び事業者が井戸の設置者ないし利用者である場合に関する同条第3号の該当性につき、実施機関において、別途判断することが望ましいものと考える。

審査会の処理経過

   平成27年8月27日 審査諮問書の受理
     同年9月9日 実施機関からの理由説明書の受理
     同年9月25日 異議申立人からの意見書の受理
     同年10月15日 諮問の審査(平成27年度第1回審査会)
     同年11月13日 異議申立人による口頭意見陳述及び実施機関からの意見聴取(平成27年度第2回審査会)
   平成28年1月25日 諮問の審査(平成27年度第3回審査会)
     同年5月27日 諮問の審査(平成28年度第1回審査会)
     同年7月21日 諮問の審査及び答申書の確定(平成28年度第2回審査会)

三島市情報公開審査会

  • 三橋 良士明(会長)
  • 白井 正人(職務代理者)
  • 大村 知子(委員)