三島の歌碑・句碑6 どむみりと あふちや雨の 花曇  ―松尾芭蕉―  (平成21年6月1日号)

 元禄7年(1694)5月13日、俳聖松尾芭蕉(まつおばしょう・1644~94)は江戸を発ち故郷伊 賀上野(いがうえの・三重県伊賀市)へと最後の旅に出ます。この句はその旅の折に、箱根・三島付近で詠まれたといわれています。

 芭蕉は、最愛なる人寿貞(じゅてい)の息子二郎兵衛を伴い、箱根を越え雨で難儀しながらも三島宿にたどり着き、新町にあった飛脚宿(ひきゃくやど)「ぬまづ屋」に草鞋(わらじ)を脱いだことが、弟子の曽利(そり)に宛てた手紙からわかっています。

 どむみりとは、空がどんよりと曇っているさま。あふちとは栴檀(せんだん)という植物で、初夏に紫色の小さな花をつけます。花曇(はなぐもり)は桜の咲く季節の曇った空模様のことをいいますが、梅雨時のどんよりとした情景が浮かんできます。

芭蕉句碑(伊豆魂神社内) ▲芭蕉句碑(伊豆魂神社内)

【広報みしま 平成21年6月1日号掲載記事】